アトミックカフェトークの興奮もそのままに、加藤登紀子のライブがスタートした。
6年程前にはじめて彼女がフジロックに登場した時には「あんな大物がフジロックに出るなんて!」と驚いたが、昨日のカフェドパリも熱気に溢れたすばらしいライブだったと聞く。今やフジロックには欠かせない存在になりつつあるおトキさんの生き様やサウンドにアバロンを埋め尽くした観客は安心して身を委ね、社会や未来に対する思いを発散させていた。
今回のライブで印象的だったのは、似た事象をテーマとした古い曲と新しい曲をそれぞれ続けて演奏して違いを私たちに感じさせてくれたことであった。
ライブで披露された”原発ジプシー”は原子力発電所で働く作業員について取り扱った80年代初めの楽曲で、時代を超えられる名曲なのだが、確かに現在の感覚とはズレる部分もあるのかもしれない。「ずいぶん時間が経ったので新しい曲を作った」との旨のMCに続いて本邦初公開された新曲は「さよなら原発 もう終わりにしよう」という歌い出しではじまる穏やかな楽曲で、例えば原発を恋人に置き換えてみてもそのまま通じそうなしっとりとした肌触りを持つ歌であった。自分を偽りながら無理を重ねることは、多くの悲しみを生む。時には別れるという選択が必要になるのは、原発に限らず人生の中で起こりえることなのだろう。
つづいて披露された”Revolution”に続いて、佐藤タイジを加えて制作したという新曲が演奏された。”NEW Revolution”と銘打たれた楽曲は生命のたくましさや前進する力を感じさせてくれるアッパー気味の曲で、ゆったりと歌い上げるRevolutionに比べるとBPMも早めに仕上げられていた。ギターとコーラスで参加している佐藤タイジとのコンビネーションも絶妙で、アコースティックギターの鮮烈なカッティングと加藤登紀子のパワフルな歌声が明るく力強く心を照らしてくれる。
“パワートゥーザピープル”に拳をあげたたくさんの観客は「思いを共有して帰ってください」とのおトキさんの言葉を胸にジプシーアバロンを後にしていた。