ロックを鳴らすエンターテインメント集団
サカナクションに対して、ロックのあり方や提示、想いとか、そういう要素が強いイメージがあったのだけど、このライヴはもうエンターテインメント集団によってできていると今さらながらに感じた。彼らのライヴを観るのは久々ではあるが、ここまで見せ方が変わるとは…というのも、照明やステージの進め方、演奏、すべてにおいてぬかりないというか、完成された曲を演奏しているけれど、ステージでもクリエーションをし続けているのだ。
演奏が始まる前から、ホワイトステージの会場は人で埋め尽くされており、その先のステージに向かう通路でさえ、人混みを掻き分けないと進めないという状態。そんな中、スタートの合図として、明暗を交互に連続した照明のあおりが入ると、すぐさまMac Book前に、ステージ前方に一列に並んだ5人が姿を見せてくれた。「フジロックフェスティバル、サカナクション」という声が入ったあと、山口一郎がスッと手を挙げると、割れんばかりの大歓声が。ステージが進むうちに知ることになるのだけど、彼の動作のタイミングはものすごく秀でており、すべて計算されつくされている気にもなるのだ。
バンド体制に戻ると、“『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』”や“インナーワールド”、“サンプル”など、流れるようにして曲を紡ぎ、まったく隙のないステージで、次々とサイケデリックな広がりを見せていく。途中、山口の「あっ」という言葉が入るのだけど、たったこれだけの言葉だとしても、今息をしていて、人間が音楽をやっているんだということを気付かせられる。深読みかもしれないが、それぐらい彼の言葉というのは重みを持っているのだ。
そして、“僕と花”が演奏されたあと、一瞬暗転し、5人とも再び前方一列のフォーメーションに。“僕と花”の歌詞「僕の目」という部分をループさせながら(“僕と花 (remix)”)、DJ状態の時間が続いていく。レーザービームなども取り入れているのだが、これはバンドでは中々ない演出だろう。インパクトを残すのと同時に、ロックバンドだとしても、型にハマらない違った音楽を楽しめるのだと、もう行動(ライヴ)で示しているようである。フォーメーションを変えることなく、“ネイティブダンサー”でみんなを高揚させて踊らせると、ブルーの照明に包まれた中、バンドの定位置へ。まるで深い海を泳ぎ、自分がいくべき場所を探していくかのようである。“アルクアラウンド”では、ドラムの江島啓一と山口のコンビネーションがよく、山口の手の合図で展開が進められていくようだった。
さらに“アイデンティティ”でオーディエンスとともに大合唱したあと、ラスト曲として“ルーキー”を。ギターの岩寺基晴とベースの草刈愛美は、自分達の楽器以外に、打楽器も使いこなし、展開をより一層盛り上げていく。ここまでMCなしでぶっとおしというのもスゴいのだが、もう一瞬一瞬のすべてがトータル・コーディネートされて練り込まれているのに大感服するばかりだった。