ギターに生命を宿した、ジャック・ホワイト
幸か不幸か、今年のグリーンステージのヘッドライナーはUKアーティストのみ。そんな中、井上陽水が日本代表として圧巻のライヴをし、その余韻が残るグリーンステージに登場するのは、アメリカを代表するアーティスト、JACK WHITEだ。ジャックが苗場の舞台に戻ってくるのは、2006年のTHE RACONTEURS以来。その間にジャックはTHE DEAD WEATHERを結成し、THE WHITE STRIPESに終止符を打った。THE WHITE STRIPESが解散したとき、もう二度とストライプスの曲は聴けないのか…と誰もが思ったが、フジロックという舞台で、再びTHE WHITE STRIPESの曲を、さらにはTHE RACONTEURSやTHE DEAD WEATHERの曲を演奏しに帰ってきた。
ジャックは今回のツアーで女性のみで編成されたTHE PEACOCKSと、男性のみで編成されたLOS BUZZARDOS という2組のバンドを引き連れて世界中を回っている。ライヴ当日にどちらのバンドと出演をするのかを決めるそうだ。今日はどちらのバンドとライヴをするのだろう…なんて思いながら、グリーンステージでジャックを待つ。サウンドチェックの段階では、シックな衣装に身を包んだ男性が楽器の確認をしていたので、今日はLOS BUZZARDOSとライヴをするのだろうか。
しかし、開演定時に現れたのはスカイブルー色の衣装を着たTHE PEACOCKS。ジャックも同じカラーのスーツに身をまとい、青色のテレキャスターを携さえて登場だ。ライヴはホワイト・ストライプスの“Dead Leaves and the Dirty Ground”で幕を開ける。ソロ・アルバム『Blunderbuss』から、“Missing Pieces”、“Love Interruption”を演奏し、再びストライプスから“Hotel Yoda”を。ラカンターズの“Top Yourself”はセッションを曲中に組み込む構成だ。ストライプス、ラカンターズときたら、次にくるのは デッド・ウェザーからの楽曲 、“Blue Blood Blues”。熱が入ってきたのか、ジャックは上着を脱いでギアをさらに一段階あげる。
ジャックを中心にTHE PEACOCKSの面々がまわりを囲んでいるので、“Weep Themselves to Sleep”ではジャックが自由気ままに、セッションをしたい楽器のところに寄っていく。ジャックのギターは落雷のような音を鳴らし、ドラム、ウッドベース、バイオリン、キーボード、ペダル・スティールといった楽器と、未だかつて感じたことがないグルーヴを生み出す。“Trash Tongue Talker”を演奏し終えたあとにバンド紹介がされ、ツアーが始まってまだ半年ほどなのに、もう家族のような雰囲気になっている。
“Take Me With You When You Go”のアレンジはギターが前面にでており、非常に荒々しいサウンドになっていて、これを聴いた今となってはCDなんてもう聴けないかも…。“Steady, As She Goes”を演奏したときには、お客さんの心をがっしりと掴んでおり、ジャックの煽りに従わざるを得ない状態に。「RADIOHEADに」と捧げられた、ラストの“Seven Nation Army”は、いまさら語る必要がないと思うが、21世紀における最高のギターソング。イントロからみんなで大合唱し、グリーンステージの盛り上がりは本日の最高潮になった。
JACK WHITE
写真:古川喜隆 文:小川泰明