ニューオーリンズの重量級ファンク
土曜日の苗場食堂にて、ひとつだけ「スペシャルゲスト」枠があったのは覚えているだろうか。事前に様々な噂がたっていたけれども、登場したのは芸歴35年のベテラン、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドだった。それも、キャリアの初期ともいえる、練り歩き(セカンドライン・ファンク)バージョンだった。バンドの存在そのものが大きくなってしまった今のDDBBでは、あまり見ることができなくなったスタイルだ。見られた人は幸運。それもまた、苗場食堂という場が引きよせたサプライズだった。
翌日(つまりこの日)、ヘヴンの闇の中に再びあらわれたDDBBは、練り歩きなしのライヴセットだった。前日のような、ストリートに立ち返った表情は消え、落ち着いたベテランバンドの風格を漂わせていた。まず、フロントに巨漢ばかりが並びたつというだけで、圧倒される。頭上でラッパが大きく花開いているスーザフォンからトランペットまで、大小さまざまなホーンが並べられ、それぞれヘブンで揺れる光を反射してくる。
ドラムが叩きだす軽快なリズムと、スーザフォンによって繰りだされるベースラインに、テナーとバリトン、2本のサックスが競い、ペットが絡んでゆく。泣きのギターは、時おりヘブン上空に走っていた稲妻と、連携しているかのようだった。
終盤には、セカンドラインの代名詞といえる楽曲”聖者の行進”も奏でられた。前日のストリート仕様と合わせ、今年のフジロックは、DDBBの歴史をあますところなく感じられた場となったのではないだろうか。
写真:中島たくみ 文:西野太生輝