ヘブンで観られる生きる伝説
そうなるだろうなと思っていたら、やっぱりフィールドオブヘブンはガラガラだった。
ロンドン・オリンピックの開会式は「英国的なもの」に、これでもかっていうほどみせる演出で、新旧UKロックの名曲がたくさん流されたと聞く(そのころ、フジロックではオールナイトフジだったので、当然観てない)。しかし、「英国的」であるならば、レイ・デイヴィスに生出演させるべきだったのではないだろうか。レイ・デイヴィスが、というかキンクスがずっと体現していたのが英国そのものだからである。その生きるロックンロール・レジェンドであるレイがロンドンにいないで日本の苗場にいる、そして演奏してくれるのに、このガラガラぶり。日本人を代表して謝りたい気持ちでいっぱいだ。
開演時間前に着いたら、フィールドオブヘブンにいる人はまばらで、いつも待つことで有名なさくら組のピザも5分、つまり焼き時間のみで手にすることができたのだ。確かに同じ時間帯に、みんなが待っていたレディオヘッド、復活したアット・ザ・ドライブイン、フジロッカー大好き渋さ知らズというメンツでは苦戦するのは仕方がない。それだけレイ・デイヴィスを好きな人が集まったわけで、前日のグリーンよりも濃い空間が作られているはずだ。
セットリストは出だしこそ前日と同じだったけれども、途中からけっこう変えられていた。キンクスの輝ける名曲たち”Sunny Afternoon”、”Victoria”などは外さず演奏されたけど、前日やらなかった”David Watts”を始めたはいいものの、バックバンドのメンバーに歌わせるということがあったものの、前日イントロのみだった”Lola”を完奏したように、前日との違いを意識したものだった。
前日と同じく、レイはほとんどの曲で合唱を促し、コール&レスポンスをおこない、手拍子を求め、足腰元気に飛び跳ねる。前日と同じようにエピソードを語りながらブルーズっぽく始まり、一転して弾けまくる本来のアレンジで演奏された”You Really Got Me”で一旦終わる、がすぐに出てきて、アンコールなんだかよくわからないけど、アコースティックギターで”Waterloo Sunset”、そして前述の”Lola”をはさんで、最後は”All Day And All Of The Night”で飛ばす。ステージ最前近くではベロベロに酔っ払ったギャズ・メイオールがいい感じで暴れている。大事なのは楽しかったかどうかであって、そういう意味では快適でかつ踊れて、みんなで合唱できて楽しく観ることができたわけだから、十分に満足。
RAY DAVIES & BAND
写真:中島たくみ 文:イケダノブユキ