感傷はここまでだ
去年のフジロック前夜祭で、いきなり現れて喝采をさらっていったモップ・オブ・ヘッド、「こういうバンドはフジロックに似合っているし、近いうちに観られればいいなぁ」と思っていたら、すぐ翌年にでられた。それは彼らの音楽がレッドマーキー深夜の持つ「パーティ感」と共振するからだろう。クラブミュージックのテイストを保ちつつ、全部を生演奏でやるというのは、ダンスの快楽とロックの持つ迫力を兼ね備え、それはまさに深夜のフジロッカーが求めているものだった。
まずは、リバプールFCやFC東京など世界のさまざまなサッカークラブでおなじみのアンセム”ユール・ネバー・ウォーク・アローン”が流れる。スクリーンには英語の歌詞と日本語訳が映し出される。モップ・オブ・ヘッドの登場曲でもある。
バンドが登場し、まずは”スーパーヒューマン”から始まった。通常、ライヴの締めに演奏されることが多かった、このポップで少しセンチメンタルな曲をライヴの頭に持ってきたのは「フジロックが終わってしまう…という感傷はここでおしまい。あとはハードに踊りまくろう!」との意図を感じた。
実際、この曲以降はハードに攻めていく選曲だった。キーボードのジョージが「フジロックにでたくて念願かない去年でて、今度はまたでたいと思ったら翌年すぐにでられるようになれた」ということを話し感謝の意を表す。そしてコーネリアスのカヴァーで”ペレ”。激しく攻撃的に改造する。ケミカル・ブラザーズの”ブロック・ロッキン・ビーツ”のカヴァーも彼らの定番だけれども、もう少し間を生かしたアレンジになっていた。去年と比べると、ドラマーが交代し、リズムが引き締まっていた印象がある。バンドが進化しているのだ。
ピークを作ったのはブラーの”ソング2″を披露したところだろうか。残ったお客さんたちは激しく踊り、祭りが終わるという感傷に浸る前にまだあるパワーを燃焼させよう気持ちを感じせた。それは自分たちバンドがどんなことを目指しているのか、時間や場所のシチュエーションに頼ることなく、自分たちの音楽の力で踊らせるんだという挑戦と、その力を証明させてやるんだという自信を感じさせた。バンドはフジロックの最初(前夜祭)と最後近くにでたわけだから、今度は1日目か2日目のいい時間帯にでてもらいたい。
MOP OF HEAD
写真:古川喜隆 文:イケダノブユキ