LIVE REPORT WHITE STAGE 7/29 SAT

LCD SOUNDSYSTEM

僕らはただひたすらダンスがしたいだけなんだ

2011年4月2日、マディソン・スクエア・ガーデン。この場所でLCDサウンドシステムは、10年の活動に幕を閉じた。僕はのちにこのライヴのパフォーマンスと舞台裏を追ったドキュメンタリー映画『Shut Up and Play the Hits』で目の当たりにし、もう彼らを見られないことに寂しさと空虚感を覚えた。それから4年後、彼らは活動を再開し、今年フジロックに2010年以来7年ぶりの出演を果たす。

大雨が降り注ぐホワイト・ステージには、只々ダンスしたいがために集まった大勢のファンが詰め掛けていた。小沢健二のステージが終わり転換に入ると、スタッフの手によって、あらゆる機材が搭載された巨大要塞バンドセットとが運び込まれ、天井にはLCDサウンドシステムのシンボルでもある巨大ミラーボールがぶら下げられる。その圧倒的光景に、オーディエンスがざわめきだした。雨脚は強くなる一方だが、そんなセットを見てしまった日には、どうにも落ち着いては居られない。そんな心境の中、ライヴはほぼ定刻通りにスタート。

司令塔であるジェームス・マーフィーが全体を統制しながらヴォーカルを取り、その周りを7人のバンド・メンバーが強靭で肉体性の強いプレイで独自のグルーヴを紡ぎ出す。そんな彼らの鳴らすサウンドは、彼らが確立したダンス・パンクに、ロック、ディスコ、ファンク、エレクトロ、さらには民族音楽系ビートも巧みに取り込んだもので、唯一無二のビートを作り出している。そして、そんなサウンドにファンは今日もまたダンスするのだ。

この日のセットリストもそんなファンの期待を裏切らないものだった。シンプルなギターリフとドラムから始まるオープニングナンバー“Us v Them”は、サビに向かうと共にグルーヴが加速していきサビで一気に解放される!「待ってました!」とばかりに、全開でダンスするオーディエンス!続く“Daft Punk Is Playing at My House”では、LCDらしさ爆発のダンス・パンクなサウンドに加え、カウベルなどのトライバルでラフなリズムがアドオンされ、そこに生まれる不協なビートにオーディエンスのテンションがさらに上昇する!すると、「一旦落ち着け」とばかりに、ミドル・テンポなエレクトロ・ダンスチューンの“I Can Change”、LCD流ミニマルビートの“Yr City’s a Sucker”、YMOオリエンタルな趣のあるイントロから始まるテクノ・アレンジの“You Wanted a Hit”と続き一旦チルアウト。

しかし、ここからがLCDサウンドシステムの真骨頂だ!“Tribulations”からの“Movement”では、ノンストップなぶっといシンセのビートとボスト・パンクなサウンド・プロダクションに、オーディエンスは再び全力でダンスする!続く、2010年フジロックのラストナンバーだった“Yeah”でも一心不乱にダンスし、“Yeah!Yeah!Yeah!”と全力でシングする!もうここまでくると、アドレナリンは出まくりで、踊りすぎて体は疲れてるんだけど、なぜか笑顔は絶えない。なぜなら、ひたすらに楽しいから!

本編終盤には、9月発売の新作『American Dream』に収録される新曲“call the police”、“american dream”、そしてLCDの新しいグルーヴを感じさせる”tunite”を立て続けに投下して、本編ラストは“Home”。解散前、最後にリリースされたアルバムからのこのナンバーで「パーティこそ僕らのHome(我が家)」と唄い、あっという間に本編終了。しかし、オーディエンスはまだまだこれで終わるつもりはないし、むしろ「もっとダンスさせてくれよ!」と息巻いている状態。当然アンコールを要求するクラップ・ハンズがホワイト全体から捲き上る!その声に、ジェームスとバンド・メンバーが再登場。

アンコール、“Dance Yrself Clean”の終盤にかけてのエモーショナル爆発な展開に、オーディエンスは最後の力を振り絞ってダンスしジャンプする。正真正銘のオーラスはLCD最大のアンセム“All My Friends”。シンプルな序盤から徐々に高揚していくこの曲は、最後のフレーズ「If I could see all my friends tonight.」を繰り返しシンガロングして約7分のエンドロールを締めた。

僕らの「ダンスさせてくれ!」に当たり前のように応え、期待以上のリターンが帰ってくるLCDサウンドシステムの圧倒的パフォーマンスに、オーディエンスは終演後ヘロヘロながらも皆満足げな笑顔を浮かべていた。そして、皆の心の中にある気持ちもまたおそらく同じだろう。

「僕らは、もっと、もっと、もっとダンスがしたいんだ!」

<セットリスト>
Us v Them
Daft Punk Is Playing at My House
I Can Change
Yr City’s a Sucker
You Wanted a Hit
Tribulations
Movement
Yeah
Someone Great
call the Police (new song)
american dream (new song)
tonite (new song)
Home
-EN-
Dance Yrself Clean
All My Friends

 Photo by 平川啓子  Text by 若林 修平 Posted on 2017.7.29 22:00