LIVE REPORT GREEN STAGE 7/30 SUN

LUKAS GRAHAM

心の真ん中にストンと落ちる声

家族や仲間を大事にしよう、そんな当たり前だけど正面切って言えないことを歌って、今、こんなリアリティのあるバンドっているだろうか。素直であることは何より大切だーーそれをストンと腹落ちさせてくれたLUKAS GRAHAMの面々。
ギターレスのトリオで、キーボーディストはサポート・メンバー。加えてサックス、トランペット、トロンボーンという編成だ。フラワープリントのセットアップという一見おしゃれな衣装のボーカル、ルーカル・グラハムも、ベースのマグナス・”マグナム”・ラーションも広いグリーンのステージをとにかく動き回る。加えてルーカスは曲紹介や感想をフランクに喋りながら、自然と歌に繋いでいく。オープナーはオーディエンスにシンガロングを求める“TAKE THE WORLD BY STORM”。

ステージドリンクはビール、そんな彼にふさわしく(?)続くナンバーは“DRUNK IN MORNING”。ピアノが軽快できっとマルーン5あたりが好きなリスナーも気に入りそうなセンスだ。どこまでも伸びる声量の中に人柄がうかがえる暖かさ、そして少々、オペラっぽい力強さすらあるルーカスの声。そのパワーとメロディの良さで5割は曲が成立している印象もあるが、だからこそシンプルなリズムと弾きすぎないピアノ、そして景色を広げる程度のホーンのアンサンブルがちょうどいいのだろう。

ピアノソロから入った“CRIMINAL MIND”では、キーボーディストの正面に立ち、イントロに移る前に拍手するルーカス。何もかもがとても自由で自然な振る舞いで、見ていて楽しいし気持ちがいい。コペンハーゲンのヒッピー自治区であるクリスチャニアから世界に飛び出すヒット曲を放ち、グラミーで3部門にノミネートされ、多忙な日々を送る中でも、変わらない生活感の根っこが見える。
「みんなのためにプレイするよ!」と歌い出した“Mama Said”ではマイクを持ちながら器用にスマホじゃなく小型カメラでオーディエンスを撮っていた。コンデジかと思ったら、後で「デジタルじゃないよ?フィルムカメラ!」と言っていたので、彼の思い出のアルバムに追加されるんだろう。

モータウンソウル、ピアノロック、そしてゴスペルの要素も感じさせる“HAPPY HOME”で、本編を終了したバンドに対して、当然のようにファンからはアンコールが起こる。そう。あの曲をまだやってないんだから。グリーンのトリでもないのに面白いが、アンコールにまずルーカスが登場、キーボーディストをファンのコールで呼び込み、まずは二人で鐘の音のシーケンスが神聖な“FUNERAL”、そして家族の物語を完結させるように、ラストに“7 YEARS”を披露してくれた。おそらく世界中で歌ってきたであろうこの曲。でも、ルーカスとマグナスが並んで腰掛けている様子は、昔とあまり変わりないんじゃないか?と想像できた。ストレートな人生訓を歌った曲だし、日本ではとかく「泣ける歌」のような扱いをされてきた曲だけど、今彼らのシンプルでニュートラルなエンタテイメントは時代が求めているものなんだと実感できた。

 Photo by 平川啓子  Text by 石角友香 Posted on 2017.7.30 12:50