RAG‘N’BONE MAN
新世代ソウルシンガーの絶唱を聴け
今年の初春のUKミュージックシーンに春風を吹かせたあるひとりの新人がいる。2メートル近いの巨体にタトゥー、鼻ピアス、風格のあるヒゲとかなり個性的な31歳遅咲きの新人がいる。今日グリーン・ステージに登場するシンガー・ソング・ライターのラグンボーン・マンだ。彼は、英国営放送局BBCが毎年発表している『Sound Of』の2017年版(英音楽業界のみならず全世界の音楽市場の動向を占うリストとして全世界から注目されている)でなんと2位に選出!この賞はかつて、サム・スミスやアデル、ジェイムス・ブレイクなど、今や全世界の音楽シーンの中心にいるようなミュージシャンも排出しているため、ラグンボーン・マンのステージにも俄然注目が高まっていた。
そして、今回、初めてのフジロック出演が、まさかグリーン・ステージ!今までの傾向からして「レッド・マーキーの遅い時間帯かな?」とか勝手に想像していたのだが、ステージ割が発表された時点で本当に驚いた!とはいえ、彼のパフォーマンス能力としては、全く遜色はないので、ある意味安心して本番を迎えた。
バンドは、キーボード、ギター、ドラム、ベース、コーラス、ヴォーカル(ラグンボーン・マン)の6人編成。“No Mother”よりスタートした彼のライヴは、よりブラック・ミュージクな展開を見せる。高らかに歌い上げつつも途中で見事なラップを挟む“Ego”、スロウな展開のソウルナンバー“The Fire”と続き、ライヴ中盤には、彼の代表曲のうちのひとつ“Skin”をキーボード伴奏のみで見事に歌い上げる。そしてラストは、彼の出世曲“Human”、低音域から高音域まで彼のヴォーカル力が120%発揮される“Better End”、セットリストの最後にふさわしい壮大なブルーズ&ソウル・チューン“Hell Yeah”を絶唱して見事にフジロックでの初ステージを走りきった。
ラグンボーン・マンことロリー・グラハムは、音楽好きな父母の影響で様々なルーツ・ミュージックになれ親しみながら幼少期を過ごした。そして、15歳の時にヒップホップに出会い本格的な曲作りを始める。DJとしてドラムン・ベースのミックステープを作り、その後はヒップホップやブルーズなどにも音楽性質を深めていきつつ、現最終地点としてソウルに行き着く。とはいえ、彼の曲は、純粋なソウル・ミュージックというよりも、あらゆるブラック・ミュージックの血を持った、文字通りハイブリッドな新世代ソウル・ミュージックと言えるだろう。そんな彼が、今後、よりハイブリッドを極めていくのか、それともどこかソリッドな方向に進んでいくのか、引き続き注目していきたい。
<セットリスト>
No Mother
Ego
The Fire
Hard Came The Rain
Lay My Body Down
Grace
Skin
As You Are
Guilty
Human
Bitter End
Hell Yeah