OGRE YOU ASSHOLE
雨降らしのビートとリフレイン
曇っている割には気温が高く蒸し暑い初日14:30。ちょっとぱらっと恵みの雨かな?と喜んだのもつかの間、雨粒の勢いは増すばかり。刻一刻と進むOGREの反復ビートがまるで「雨降らしの呪文」か「山や空を起こしてしまうビート」なんじゃないかと言うぐらいの本降りに。ライブの途中で足元が川と化す経験は、日照り続きの最近のフジロックでは珍しい。
前回のホワイトステージでは、ホワイトの特徴である重低音でオーディエンスを酩酊させたOGREだが、今日は出てきて早々、全員が一音のロングトーンで、何か儀式でも始まりそうな演奏からスタート。OYA号がヘヴンから離陸する、何かそんな同じ船に乗った気分はいつも通りだ。1曲目は少し前のアルバム『100年後』から“黒い窓”。サイケデリックなだけじゃなく、ブルージィな印象で、シド・バレット脱退後の初期ピンク・フロイドにも似たイギリスのバンド感を覚えたのはわたしだけだろうか。続く”フェンスのある家”も同アルバムからの選曲で、リリース当時より出戸学(Gt、Vo)の歌がよりよく聴こえるし、アレンジはアフリカン・リズムに振り切っていた。
ますます強くなる雨に、外国人オーディエンスは裸足で水たまりを跳ね上げ、音頭や日本の土俗的なビートを感じさせる“簡単な自由”では、日本人以上に彼らが阿波踊りのようなステップを踏んでいるのが面白い。感じたままに体が反応するのは、じっと聴いているのがしんどいほどの雨になってきたことも無関係じゃないかもしれない。
出戸は雨模様を見ながら「どうも、OGRE YOU ASSHOLEです。最後まで楽しんで行ってください」というシンプルなMCに応えて、オーディエンスも黙々と自分のグルーヴに耽溺する人、レインウェアも着ずにひたすら自然を甘受している人など、まさに乗り方も様々。OGREの演奏と避けようのない大雨が相乗効果を生んでいるとしか言いようがない光景だ。
後半はおなじみ“ロープ”のロングバージョンが呪術っぽさをさらに増し、馬渕啓(Gt)が激しいソロやリフを弾き、アンサンブルがカオスの様相を呈していけば行くほど、面白いほど雨も強くなる。冷静な判断なんてできない、バンドの演奏と自然の共演。それでもその場を去る人がほとんどいなかったのは、同じ濡れるなら人間、踊りたいという本能があぶり出されたということなんだろう。