FUJIROCK EXPRESS '23

MOREFUN - AREA REPORT 7/30 SUN

【フジロック3日目深夜周遊記】

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Posted on 2023.8.2 10:51

あまりにもあっという間に過ぎ去っていく

きゃりーぱみゅぱみゅによって口火を切られた3日目の深夜。もろもろの仕事に一区切りをつけ26時頃にオアシスに繰り出すと、1日目のOVERMONOだったり2日目のTSHAROMYのサウンドが弾けていた同時間帯ほどではないけど、それでも多くの人が夜を楽しんでいるみたいだ。Rainbow cafeの店員さんが、通りがかった下町バルながおか屋の人たちと「フジローック!!」って掛け合ってたりする光景を見ると、最終日って感じがしてくるなあ、なんて少ししみじみとしてしまう。

あと3時間ほどで今年のフジロックが終わってしまう名残惜しさを感じつつも、最後まで楽しみ尽くそうとする人々の活気を感じる心地よい空気感。僕はというとオアシスに響いているレッド・マーキーのYUNG BAEのプレイと、溶け合うように聞こえてくるGAN-BAN SQUAREのTAKU INOUEのサウンドに後ろ髪を引かれつつも、パレス・オブ・ワンダーに向かう。だって今年まだパレスに行ってないもの!パレスへ向かう道すがら、ゲートでは記念撮影をする人たちの姿が。でも僕らにはまだ早い。

パレス・オブ・ワンダー編

26:20くらいにパレスに到着すると、ROOKIE A GO-GOではSPENSRのライブが盛り上がりを見せている様子で、クラブ・ミュージックの情感をファンキーなバンドサウンドに落とし込んだような演奏は、こんな夜にぴったり。「来年もまた苗場で会えたら嬉しいです」という言葉にも気概がこもっていた。

そしてたまたま友人と遭遇し、すぐ隣のパレス・アリーナで始まったのは、SAKURA CIRCUSの今年のフジロック最終公演。前夜祭でもレッドのPA前あたりからこの公演を観ていたが、目の前で見ると迫力も段違いだ。連動して回転する2つの円の内外で2人がまわるパフォーマンスは、一歩間違えれば大事故必至でハラハラドキドキが止まらない。

前夜祭でも観たDuo vitalysのバランス芸は、至近距離で見ると2人の表情がとても印象的で、一瞬でも集中を切らすと失敗するであろう緊張感が凄まじい。そして新太くんとアラン・ダヴィッドさんの足技「イカリオス」では新太コールが巻き起こり、ビシッと決めた新太くんは会心の表情。9歳にしてこのショーマンシップとプロ意識なのだ。まったくもって頭の下がる思いだ。

司会進行をしていた小深田尚恵さんが取締役を務め、我が子と親戚らを合わせて総勢約50人の大所帯サーカス一家にとって、一つ一つが人生をかけているステージ。その気概に触れて僕も自分の人生について少し考えたりもする。これぞ本物の体験とでも言いたくなる、生々しくて濃密な体験がパレスにはある。そしてそれはいたるところで同時多発的に起こっている。

ROOKIE A GO-GOに戻ると今年最後の出演者となるカラコルムの山々が登場。な、なんだ?どういう音楽だこれ?かなりカオティックなバンドサウンドに歌心も混ざり合うパフォーマンスは深まっていく夜を刺激的に彩っている。

ルーキー枠を設けるフェスティバルは数あれど、フジロックのように深夜に開催するのは珍しい。みんなベロベロに酔っていてテンションも弾けているから盛り上がりもする一方で、楽しみたいという直感のみに従って、面白そうな方にふらふら動いている人々をつかまえ続けるのは、並大抵のことではないだろうとも感じる。

ルーキーの出演者だってこのステージの出来次第で人生が変わるのかもしれないのだから、全身全霊で出せるものを余すことなく出す気迫が光っている。GEZANだって思い出野郎Aチームだってここからメインステージに駆け上がったし、おとぼけビ〜バ〜やCHAIは世界で戦っている。もちろんここで来年のメインステージを勝ち取ればそれでもう成功というほど人生は甘くないが、ここで触れたルーキー達の熱情も詰めかけた人々の記憶に残っていくはずだ。

バーカウンターのお兄さんにお酒を奢ってみんなで乾杯したり、DJで奔放に踊りふけっていたりと、自由なフィーリングが弾けているパレス・オブ・ワンダー。見かけた茶道のようなパフォーマンスは僕にはなんなのかよくわからなかったが、オフィシャル・サイトに載っているものだけがすべてではない。

至る所に設営されたさまざまなオブジェを眺めながら、僕は本当にたくさんのものを見落としていることに気づく。忙しく駆け回るライブ取材の中ではどうしてもそうなってしまう部分もあるのだが、ただライブを観るだけがフェスティバルではないのだろう。気づかないだけで、素敵なことはフジロックのいたるところにあるんだなと、しみじみと考える。

そしてクリスタル・パレス・テントに入ると、BIG WILLIE’S BURLESQUEがフロアを盛り上げている。いや、“が”ではないな。ここにいる全員が織り出すような光景は眩いばかりで、僕らもあまり自覚はしていなくとも、観るというよりこの濃密な時間を感じることをしているんだろう。

90分程度しかいなかったが、なぜあれだけ復活が待望されていたのか、なぜみんなが口々にフジロックの象徴とか本質とか言っているのか、その理由をひしひしと感じる時間だった。でもまったく堪能し切れた気がしない。今年の復活を心から嬉しく思い、来年に思いを馳せながら、再びオアシスのほうへ足を運ぶ。

オアシス編

この時間になってくると多くの飲食店も閉まり始め、店員さんも奔放な感じになっている。28時過ぎにオアシスに到着すると麺屋「極」のお兄さんが呼び込みをしていて、お客さんや隣の店の人とも気さくに言葉を交わす様子は、もう友達のような感じもある。もちろん売り上げ次第で、という話もあるはずだけど、与える側 / 与えられる側なんて垣根がなくなっていくこの感じが好きだ。

GAN-BAN SQUAREではSeihoがガンガンにフロアを煽るビートで盛り上がっている様子。アンビエントなセットも好きだけど、これもまたいい。そろそろ空が明るくなっていく。遭遇した友人とベストアクトや今年あったエピソードを話しながら、ゆらゆら揺られていた。いつだったかここでUKアンセム祭りみたいな朝を迎えたことがあったななんて、懐かしく思ったりもした。

そしてレッド・マーキーに足を運んでみるとFrancois K.の最終盤で29時終演。なはずが前方に集った人たちは歓声と拍手で次を望み、帰る気配がまったくない。「もう一曲かけれるよ」と流暢な日本語で応え、29:18頃、最後の音が鳴り止む。本当に一瞬足を運んだだけだけど、すごくいいフロアだったんだろうなということがよくわかる、ハッピーなムードが漂っていたことだけはよく覚えている。

前夜祭から4日間のさまざまな出来事を思い返しながら、道行く人々をぼんやり眺める。疲れは感じさせつつ楽しそうな様子も見て取れて、その足取りは確かだ。本当にいろんなことがあった。一年で一番歩いたし、一年で一番遊んだ。一年で一番虫に刺されたし、一年で一番疲れてる。でも一年で一番充実していたこの4日間。

今回のフジロックは僕にとって自分を見つめ直すような体験だった。来る前はあまり調子が良くなくて不安もあったけど、今はヘトヘトでもすごく気力に満ち溢れている。みんなが口々にお正月とか言うのは、楽しかったからってだけじゃないんだと思った。ここでもらった活力を胸に、心機一転で僕も明日からの日常を歩いていこう。そして来年もここに来よう。確かに残ったそんな実感を噛み締めながら、僕は帰路に着いた。

[写真:全7枚]

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7/30 SUNGAN-BAN SQUAREOASISRED MARQUEEROOKIE A GO-GOTHE PALACE OF WONDER