Gellers

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8/1 08:50  Twitterに投稿する

 「あのギターの人、トクマルシューゴさんですよね?」

 「もうすぐ終わってしまうなぁ」的な寂しさをほんのり感じ始めたフジロック三日目の夜。苗場食堂にて「Gellers」のサウンドチェック風景を眺めていると、お客さんにそう尋ねられた。

 「Gellers」は2007年にルーキー・ア・ゴーゴーのステージに登場したバンドだ。直後に活動を休止してしまいとても残念だったのだけれど、今年になって復活し、再びフジロックのステージに登場してくれる事になった。メンバーには海外でも高く評価され、2009年のニューズウィーク誌で「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれてしまった(!)アーティスト、トクマルシューゴがギタリストで在籍している。しかし、彼らに対して特筆すべきは、そこではないのだ。

 メンバーと機材が乗りきった苗場食堂のステージは、もうすでにギュウギュウといった感じ。そしてそれはお客さんも同様で、そんな中、ライヴは始まった。

 ”M”でピアニカを吹いて見せるヴォーカル&キーボードの田代。彼はルーキーステージ出演の時もキレまくっていたのだけれど、今年の苗場食堂でも衝動のままにキレて大暴れ。”Buscape”の演奏中にドラムセットにダイヴし、機材を破壊する。しかしこのバンドが本当にオソロしいのは、それでもどこか冷めた(覚めた)視線の演奏が併行し続ける所だ。

 彼らの演奏の裏では、グリーンステージでトム・ヨークが登場する「ATOMS FOR PEACE」が演奏中だった。「アレ見ないで俺ら見るなんてバカか!」なんてMCで言われてしまったのだけれど、壊れたステージセットを直しているインターバルの間、トクマルがギターでさりげなくレディオヘッドの”Creep”のワンフレーズを爪弾いて見せた。すかさず反応するお客さん。そしてコッソリと続き始めた歌と演奏が、結局最後にはお客さんもサビで一緒にアンセム状態、大音量演奏で大盛り上がりに。こらこらこらっ。でも、まぁ、面白かったからいいか。

 機材が復活した演奏終盤、”9 teeth Picabia”でメンバー全員、狭いステージで蠢くようにキレ始める。ステージに座り込んでギターを抱えこみながら演奏を続ける川副。トクマルはギターを置きドラムスティックを持ったかと思うとシンバルを乱打し始めた。止む事なく演奏は続いている。ス、スゴい、コワい。
 
 行動に対する理論立てが存在せず、好きな事に対して一切の妥協がない子供の衝動。時としてオソロしいそれらは大人になるにつれ理性とか分別とかそういったものでねじ伏せられてしまうけれど、「Gellers」にはDNAとしてそのまま存在してしまっているのだ。彼らはそんな、稀有なバンドなのであった。

写真:輪千希美
文:小田葉子