登場するアーティストもあとわずかになったフジロック最終日の夜。苗場食堂のステージ周辺はいまだかつて無いくらいにギッシリとお客さんで埋まり、そして「彼」が登場するのを待っていたのだった。
「こんばんは、カジヒデキです(はあと)」
あぁ全てのセリフに(はあと)を入れたい。ノンジャンルの出演者を誇るフジロックに、ついにミスター・スウェーデン、カジ君の登場である。集まれ森ガール! 集まれオリーブ女子!
カジ君を中心にRiddim Saunterのメンバーが参加するパーカッション、ドラム、フルートで構成されたバンドは、アコースティック仕様。”パッション・フルーツ”からライヴは始まり、ハーフパンツに麦わら帽子姿のカジ君が「さぁみんな一緒だよ(はあと)」と客席に声をかけるのは”甘い恋人”。デスメタルの人が乱入して苗場食堂のステージが真っ赤な血で染まる……ような事はなく、お客さんも一緒にサビで大合唱。
フジロック開催前、テレビ番組でブライアン・バートンルイスに苗場に連れて行かれたというカジ君。番組の中でフジロックのお客さんをテーマにしたという”ロックと長靴”を作曲したのがきっかけで、急遽フジロックへの出演が決まったのだという。フジロックのお客さんに捧げるというこの曲、苗場食堂の空気にもピッタリハマって、ほんとにポップでキュート(はあと)。
後半はギターを持ち替えて、ロックモードのカジ君。再び降り出した雨にも全然負けないお客さんの熱気に、「サンキュー、ソーマッチ(はあと)」と嬉しそう。かつてCMソングにもなった”LA BOUM ~MY BOOM IS ME~”ではオアシスエリアのお客さんも大盛り上がり。本編終了後には熱烈なカジ君コール(アンコール)が起こり、急遽予定に無かった”ヘイ・ヘイ・ベイビー・ポップ”が演奏され、お店のお客さんまでも盛り上がっていた。カジ君が去り際に言っていたのけれど、「サンキューフジロックピーポー(はあと)」。そう、まさにそんな一体感を見せていたのだった。
写真:輪千希美
文:小田葉子