今年のダークホース、堂々登場
DJ MAMEZUKAが、ポーグスからマノ・ネグラにつないで、徐々にロックの枠からはみ出しはじめた。いよいよかといったところで、(ひょっとしたら予想外のスピンだったかもしれないが)クラッシュの”This Is Radio Clash”のリミックスが流れる。ステージのうえは、様々な人影があり、少しばかりのトラブルがあるようだった。その曲が終わらないうちに、前夜祭のライヴアクト3組目、ONDA VAGAが演奏を開始した。出しまくるレーベル、「アンクルオーウェン」が送り込んだアーティストだ。
前評判か、フジ開幕によって底上げされたテンションによるものか、レッドマーキーを埋め尽くした人の波は大きく揺れた。自己紹介として”オンダ・バガのテーマ”を浴びせて、またたく間にラテンの空気を充満させていった。
“マンベアードの歌”では、レーベルの「船長」こと松井聡太が必死になって作りあげたお手製のカンペをめくり、PV同様にスペイン語の手引きをしはじめる。すると、メンバーがスクリーンを指差し、それに気づいたオーディエンスからは、笑いが溢れてくる。
そして一番のハイライトとなったのが、日本に対するリスペクトとして披露された、タイマーズの”デイ・ドリーム・ビリーバー”だった。
この日本語曲は、ただ彼らを人気者にするためだけに取り上げたわけではない。インタビューの席で話したのだが、「キヨシローが、フジロックにとっていかに重要な存在か」を伝え、その人柄を知ったうえで演奏しなければ意味が無い、大切な楽曲だ。そして、彼らはキヨシローという存在を理解し、リスペクトしたということなのだ。
日本と、キヨシローに対する想いが花開いた瞬間は鳥肌ものだった。テントから溢れた人も手を掲げ、大合唱をし、満面の笑みと、いくらかの涙目が生まれていた。おそらくオーディエンスのみんなも、アルゼンチンの「オンダさん」が、より身近に感じられた瞬間だったのではないだろうか。
“デイ・ドリーム・ビリーバー”に対する答えか、DJ MAMEZUKAは、ライヴ終了直後の曲にRCサクセションの”ラブ・ミー・テンダー”を選んだ。そこには、アーティスト同士の、音楽による会話が成り立っていたように思える。
時間があれば、オンダさんを見てみて欲しい。いたるところでゲリラライヴを行っているという情報もいくつか耳にしている。ステージに向かう道すがら、彼らに会えたならば、それは何かが起こるということ。期待して損はないはずだ。
ONDA VAGA
写真:八尾武志 文:西野太生輝