雨も降らない前夜祭っていつぶりなんだろう?雨具の心配をしないで浴衣着て、地面に座ったり寝そべったりできる前夜祭ってあったっけ?と、ここ数年は雨に祟られていたフジロック前夜祭も、天候に恵まれてたくさんの人たちが集まった。やっぱり今日はテントに籠ったりホテルや民宿でサッカーを観ていないで外に出たくなるものだ。
レッドマーキーも大賑わいで、バンドとしては4番目に登場したロス・ロンリー・ボーイズの登場に会場も沸いていた。ルックスは少々地味ながら(失礼)、グラミー賞の受賞歴もある彼らをレッドマーキーで観ることができるというのは、たいへんな贅沢なのだ。メキシコ系のガルザ3兄弟の演奏は重厚で堅実、「ハードロック」とか「ヘヴィー・メタル」という重さとはちょっと違うだけど、十分に重いサウンドだし、硬質な手触りがある。ブルーズを基本にして、ファンクやカントリーやポップスを消化したロス・ロンリー・ボーイズの音はライヴの場でこそ輝きを持つのだと実感する。
特にヘンリーのギターソロは誰もがいうようにスティーヴィー・レイ・ヴォーンの後継者の名に恥じぬブルージーでありポップセンスも兼ね備えたもの。6弦ベースのジョジョ、ハードでテクニカルなドラムに支えられて自由に弾きまくる。フロントの2人はコミカルな動きをしたり、ジョジョがスギちゃんばりに「ワイルドだろぉ~?」といったり、1本のギターを2人でギターソロを弾いたりと、エンターテナーとしても資質は十分だ。初めて観たお客さんも惹きつけるものがある。
スペンサー・デイヴィス・グループの”アイム・ア・マン”をブルース・ロックに改造したカヴァーを披露した後に、彼らのヒット曲”ヘヴン”のイントロのリフを刻んだ瞬間が一番の盛り上がったところだった。ポップでウキウキした曲調ながら、しっかりとブルージーなロックでもある”ヘヴン”の万能さを思い知らされた。明日もまさにフィールドオブヘヴンに登場するので、短い時間ながら予告編としては十分すぎるステージだった。
LOS LONELY BOYS
文:イケダノブユキ 写真:平川けいこ