キラキラ感と空気感のあるヴォーカルの融合
機材のトラブルがあったからなのか、スタート時刻になっても登場の気配がない、アウル・シティー(アダム・ヤングのソロプロジェクト)。今か今かと、その場にいたオーディエンスが声を上げてみたり、手を叩いてみたりしてみるものの状況は変わらず…。いつになるのだろう?とやきもきしていながら待っていると、ようやく開始予定から20分遅れで、鍵盤&コーラス、ギター&キーボード、ドラムといった、バンドメンバーとともに登場してくれた。
もうその遅れを取り戻すかのように、MCというMCは挟まず、キラキラしたメロディが印象的なシンセポップな楽曲を立て続けに披露していく。ヴォーカルはやや抑えめで、どちらかと言うと、サウンドとの割合とそこまで変わらない。だからか、しっかりと構えなくとも、ラフに、そしてラクに聴けるのが特徴だ。空気感のあるヴォーカルなのに、ベタにしっとりとした楽曲群ということではないのも好印象である。
特に後半はキボーディストとかけ合いのように歌を作り上げていくのだけど、今も彼らの掛け合いのシーンが頭に浮かんでくるほど、ふたりの声の質感の相性がバッチリなのだ。それはたぶん、オーディエンスも同じく感じていたことで、ものすごく騒いだりというタイプのアーティストではないが、ふたりの声が絡み合うたびに歓声があがっていた。
そしてラストには“グット・タイム”といっていたのだが、たぶん、8月20日にリリースされるアルバム『ザ・ミッドサマー・ステーション』の中の新曲と思われるだろう(定かでないが…)。その名の通りというべきか、トラブルはあったけれど、最後まで目の前がポップの色で彩られるようなよい時間であった。
写真:中島たくみ 文:松坂 愛