異種混合バンドが奏でるのは至極のポップ・ミュージック
フジロック1日目の正午。灼熱炎天下のフィールドオブヘブンに出演したのは、ハンバート ハンバート×クール・ワイズ・マン。元々のきっかけは、昨年に開催されたイベント「Shimokitazawa Indie Fanclub」での共演だったようだ。よっぽど意気投合したのか、1日限りの編成にとどまらず、今年6月にはアルバム『ハンバート・ワイズマン!』をリリース。そして今回のフジロック出演まで繋がった。双方とも過去に何度もフジロックに出演しているため、非常にリラックスした様子でステージにあがった。「なんか部活動みたいだよね」というメンバーのMCの通り、特別編成でのステージを、こどものように楽しんでいるように見えた。
ライブのアルバムに収録された楽曲を中心に進んでいった。「おいらの船」「罪の味」といったハンバート ハンバートの楽曲はクール・ワイズ・マンの演奏によるスカ・アレンジが加わることで毒が抜け、愉快で能天気な様相になった。また、歌いだしで歓声があがるほどハンバート ハンバートの代表曲となった「おなじ話」も、別離がテーマの歌詞なのに、そこに悲しみの感情は感じ取れないほど、陽気な楽曲に生まれ変わっていた。元々この曲の歌詞は様々な解釈が可能だが、もしやそれは「ミック・ジャガーは4,000人の女性と寝たらしいよ。それって1週間に換算すると2人ずつ…ってことだよね」というオトナなMCへの布石だったんですかね、遊歩さん。男女の別れなんて軽いもので次があるわよ…ってそれは過剰解釈ですね。
どこか童謡のような懐かしさのメロディとシニカルな歌詞で独特な世界観を描く男女デュオのハンバート ハンバートと、日本のスカ・シーンの大御所バンドであるクール・ワイズ・マン。混じり合わないようなこの個性のある2組のアーティストがタッグを組んだことで、不思議なことに幅広い層にリーチするポップさを身につけたように思う。シャネルズのカバー「ランナウェイ」で団塊の世代の心をぐっと掴んでみては、ハンバートハンバートをお茶の間に浸透させたCM曲、「アセロラ体操の歌」ではおちびちゃんの心もがっつり掴んでみせる。ラストにはサザエさんのエンディングテーマまで披露してみせた。日曜の夕暮れ時にテレビでこの曲を聞くと休日の終わりを感じるものだが、「今日は楽しい~ 今日は楽しい~ フジロック~」という替え歌バージョンだったので、これから愉快な3日間が待っていることを予感させられた。さらに、歌の後にはサザエさんでおなじみの皆で「じゃんけんぽーん!」で締めくくりという徹底ぶり。みなさん、楽しい3日間の始まりの運試しともいえるこのじゃんけんには、勝ちましたか?残念ながら、私は負けました…。