研ぎ澄ます音、広がるスケール

ヒリヒリするくらい照りつける日差しがようやく傾きかけた初日フジロックの午後。グリーンステージに向かうと、その巨大なステージに反して、あくまでライブハウスのサイズでセッティングされている機材が目に入ってきた。

「ハロー！」。ザ・バースデイのボーカル＆ギターのチバがぶっきらぼうにひと言発すると、ライヴがスタートする。余計なスペースとかムダな装飾。そういったものを一切排除したかのような彼らの演奏は、タイトでクールでエッジーで、広大なグリーンステージ周辺の空気を、一瞬で「のして」しまった。

ライヴは”ROKA”から”Buddy”、そして今月リリースされたばかりのニュー・アルバム『VISION』から”ゲリラ”へと息つぎすることなくゴリゴリ疾走していく。「晴れて良かったっすね」とドラムのクハラがお客さんに声をかけると、ギターのフジイがイントロを弾きだし、”なぜか今日は”へとなだれこんでいく。その後演奏された”Riot Night Serenade”のギターのイントロを聴いていても感じたことなのだけれど、かつて在籍していたイマイアキノブのギターの艶っぽさも良かったけれど、フジイの乾いたギターの音が今の彼らの演奏に本当にハマっている。この曲の演奏後、クハラがスティックを客席へと投げていた。

次の演奏へと向かうブレイク中、モッシュピットからさかんにメンバーの名を呼ぶ歓声が飛んでいた。それに応えてなのかどうなのか、チバが再びぶっきらぼうにマイクに向かい、「賑やかなのは、好きさ。」と返し、次の曲のイントロをつま弾くと、オフマイクで観客に向かってコーラスを要求するしぐさを見せた。演奏されたのは″涙がこぼれそう″。サビの部分ではグリーンステージに集うお客さんの大合唱が起こる。

ところで逆に彼らに必須の要素は何だろう。それはロマンチストな部分なのかもしれない。新曲の″さよなら最終兵器″で聴かせるメロウな感覚がまた、硬質な演奏にとても似合っているのだ。そしてもう一つ。”涙がこぼれそう”で起こった大合唱は、さすがグリーンのスケールといった感じで、お客さんの大合唱の声に全身が包まれているような感覚になった。このスケール感も、彼らにとって決して余計なものでは無かったようだ。