行き渡る歌声
今回のフジロックで、ブンブンサテライツは2回目のグリーンステージを務めることになった。強く印象に残ったのは「川島のヴォーカルがすばらしかった」ということだ。3万人くらいが観ることができるステージ全体に声を行き渡らせ、観る人まで届くような歌を歌えるのだ、どうしてもブンブンサテライツは、生演奏とエレクトロニカの合体とかそういうサウンド面から語られることが多いけれども、グリーンステージふさわしいスケール感を持つには、どうしても歌と声がひとりひとりに届かないといけない。その課題をクリアできたのではないかと思うのだ。
夕暮れになり、ようやく日中の暑さも弱まり過ごしやすくなったグリーンステージは、ヘッドライナー登場に向けてお客さんも集まり、例年なら話題のバンドかヘッドライナークラスの埋まり具合であった。もちろん、お客さんの目当てはこのあとにあることは十分に承知しているのだけれども、後ろに控える強力なイギリス勢の前に「日本のブンブンサテライツだぞ」とアピールできたのではないか、そんな気合を感じた。17時30分時間きっかりに始まり、早くも2曲目の”MOMENT I COUNT”で加速が始まり、”BACK ON MY FEET”で、モッシュピットだけでなく広いエリアのお客さんたちを踊らせることに成功する。
川島のヴォーカルもすばらしいけれども、もうひとつ思ったのは、音が非常にクリアだったこと。濁ったところがなく、彼らの発する音のひとつひとつがきちんと人が演奏しているものとして受け取ることができる。ギターやベース、そしてサポート・ドラマー福田洋子のよる迫力あるプレイは生々しさを伝える。それに加えて、中野が操作する機材からの音も楽器のひとつとして響くのだ。機材を操作する中野の手がスクリーンに大写しになると、あらかじめ打ち込まれている音もゆらぎを持った音として鳴らすことができるのだということを目と耳で実感できるようになる。
『ガンダムUC』の主題歌である”BROKEN MIRROR”も演奏され、さらに前に進む姿をみせる。そして一番のクライマックスは”KICK IT OUT”だった。イントロが鳴ったときの反応、そしてお客さんたちを巻き込んで盛り上がりそれが広がっていく様子は感動的なものだった。最後は”FOGBOUND”で締めくくる。エレクトロニカ的な色の強い、割りと初期の曲で彼らの原点も体験できる、フジロックと共に歩んだ彼らの集大成といっていいライヴだった。
BOOM BOOM SATELLITES
文:イケダノブユキ 写真:中島たくみ