ありあまる力がありったけ放出されたステージ
2003年に結成…ということはザ・クークスとして9年になるのか…。まず彼らのライヴが終わった後、そういうことを考えていた。というのも、まるで新人バンドのようにパワフルでフレッシュ感があるのだ(演奏面でということではない)。
そんな彼らのライヴのスタートは、まずは歌とアコギというシンプルな“シーサイド”から。1分30秒くらいしかない楽曲なのだが、キャッチーですぐに覚えやすいし、なにより耳馴染みがいい。全曲ともに言えることなのだけど、彼らの楽曲は1曲も聴いたことがなくても、まったく問題ないくらい楽しめてしまうから不思議だ。
次いで“シー・ザ・ワールド”、“イズ・イット・ミー”、“ソファ・ソング”など、力がありあまっているのだろうかと思ってしまうくらい、躍動的で、元気一杯に演奏を披露していく。なかでも、ヴォーカル&ギターのルーク・プリチャードなんて、ギターを持ちながらもクルクル飛び跳ねたり、動き回ったり…もう少し目を離しただけで、視界から消えてしまうほど。シンプルで単調な進行が多い楽曲の中、ここまでグイグイ観客をひっぱることができるはもう彼らのアーティスト性の高さを物語っているだろう。半端ないの一言である。そのことを1曲ごとに沸き起こる歓声と合唱の中で、しみじみと実感させられた。
それにしても集まったオーディエンスが多く、嬉しいという気持ち反面、背伸びをしてもステージが見え隠れするような状態だったのが残念なところ。次の来日する機会にはいち早くステージ前に行かなければ…と思った次第である。
写真:加藤智恵子 文:松坂 愛