ジャンルを固定せず、中間をすり抜けていく音楽
イギリスのマンチェスターの5人組バンド。スイス・リップスの事前情報としてはそのくらいしかなく、あとは『You Tube』に数曲音源があるのみ。情報が少なかったからか、ギュウギュウという感じではなかったのだけど、ちょうどよく観られるというほどよい観客入りでスタートを切った。
みんな様子見かと思いきや、1曲目を飾る“ダンズ”から、はねるメロディに合わせるようにして、体をテンポよく揺らしていく。10〜20代であろうメンズが多く見られるのだけど、たぶん、メンバーも同じくらいじゃないだろうか(定かではないが)。特にベースとヴォーカルは、見た目からして、少年から大人へと切り替わる時期くらいのようにも思える。
だからといって、バンド自体フレッシュでものすごくアグレッシブかと言えばそうでもないし、もの静かでゆったりという感じでもない。そのちょうど中間くらいを泳いでいるのだ。サウンド面をみても、シンセサイザーが印象に残る分、シンセポップとも言えばいいのかもしれないが、いい切れない感じがあるし…。エモーショナルと言えば、エモーショナルだし、ダンスミュージックといえば、同じくダンスミュージックにも思える。要はすべてにおいて偏らず、ちょうど何かと何かの隙間をすり抜けているというか、上手く中間を突いてくるのだ。だから、「ちょっとシンセポップに飽きたかな?」みたいな人も、「これだったら聴いてみようかな」と思い立てるような気さえする。
そして、この日のセットは他にも“ユー・ゴット・ザ・パワー”や“グロウ”などを演奏。もう本当にみんな耳が早いな(当たり前かもしれないが)と思うほど、しっかり曲を聴いてきており、サビになるとメンバーが煽らずとも、必ず歌い出すのがより一体感を生んでいた。持ち曲が少ないのか終了時間の10分前には切り上げていたのだけど、今後もう少しこのバンドのことを紐解いていきたい気持ちでいっぱいだ。
SWISS LIPS
写真:熊沢 泉 文:松坂 愛