本物のアフロビートを引き継ぐ者
トニー・アレンと共にアフロビートというジャンルを築き上げたレジェンド、フェラ・クティの息子と聞いただけでも、鳥肌ものなのに、その父フェラ・クティが率いたバンドEGYPT 80がバックバンドについていると言うではないか。遺伝子レベルで言えばそれはもう限りなく当時アフリカで鳴っていたアフロビートに近く、そして2009年に引き続き、ここフジロックで体感できるということを僕は嬉しく思う。
13:00ちょうど、MCによるメンバー紹介によって幕開けとなった。意外にもグリーンステージはまばらで、演奏が始まってもモッシュピットに入れるほど。楽器隊の調整演奏が終わるとまんをじして、シェウンの登場だ。堂々と笑顔でステージ中心に着き、一気に吹き上げるサックス。それと同時に巻き起こる歓声。気温と比例するかのように観客の熱気もあがってきた。
思えば、2011年朝霧JAM。初日の夜、レインボーステージに登場したシェウンは、少し寒そうで、エンジンがかかるまで時間がかかったような気がした。その後、10月とは思えないほど熱気溢れるレインボーステージが完成するわけだが…。いや、これは後付けで、猛暑のグリーンステージのライブを見て、この気温こそが彼らの過ごしてきた世界に近いのではないか?と思わせるほど、最初からテンションが高く、演奏も絶好調に見えた。予定された演奏時間は2時間。MCというMCはない(シェウンがしゃべるのだが、基本的に音楽は止まらない)。この調子で行ってむしろバテるんじゃないかと思ったほどだ。しかし、バテたのはむしろ観客である僕たちの方で、彼らのステージは弱まることを知らず、ずっと上り調子で最後まで走り抜けたのだ。
ライブ中盤では、白いシャツを脱ぎ捨てたシェウン。鍛え上げられた体をさらして、「ソフトなグルーヴをいくよ」と言い放ったはじまった次曲。それまで演奏していた踊れるアフロビートとは少し違い、妖艶なゆったりした曲であった。少し踊り疲れた観客も音楽に合わせてゆらゆら揺れていた。しかし、この曲が終わるともう休む暇がないくらいぶっ飛ばして、暑さの最中、半ば狂ったように踊り、コール&レスポンスを繰り返し、燃え尽きる勢いで終わっていった。まばらだった観客も最後にはグリーンステージにたくさん集まっていて、そして全員がシェウンについて行くのに必死だったと思う。名匠フェラの血を受け継ぐ者はやはりただ者ではない。