SKAレジェンドイヤーの一強、穏やかにグリーンステージを支配
この時のグリーンステージは、雲がかりつつしっかり暑い昼下がり。PA前でも踊れるスペースがある程度のボリュームで人が集まり、その後方は寝そべったりビールを片手にしたりの穏やかなフェスティバルの景色をつくっていた。
登場したトゥーツはナイロンキャップに鎧のような服、グラサンはワンレンズというイカつめのいでたち。ボリューム感を増やした最近の長渕のような…などとどうでもいい感想を考えていたら、軽快な裏打ちのリズムが鳴り始める。メンバーにはキーボードを含めた一般的なバンドセットと、女性コーラス2名。ジャマイカンミュージックの大御所バンドとしてはスタンダードな編成と言えるだろう。
序盤から名曲”Pressure Drop”を披露し、ハットをかぶった好事家たちが思わずハイネケンのカップを持った手を上げる。レコードの溝を走る7インチな音を飛び出し、フェスティバル仕様で”再生”されるジャマイカンクラシック。プレイされる”Monkey Man””Funky Kingston”などでは、「イェーイェイェー」「ナーナナー」など、コールアンドレスポンスをしかけたり、時には曲のスピードをスカパンクのごとく2倍にしてみたりと、バンドメンバーの力量、懐広さを十分に生かしたスタイルを届けてくれる。トゥーツ自身も豪快だけど人懐っこいオッサンという具合に、終始笑顔を絶やさず、時にはアコースティックギターをかき鳴らしながらステージ前方を左に右にと動いて回る。
昼下がり、大自然、そしてスカ。あらかじめ決められていたような最良の組み合わせが、何にもしばられないで踊らせてくれる贅沢を私たちに与えてくれた。”Take Me Home Country Road”や”Louie Louie”といったキラーチューンをカマしてくれるなど、口元のゆるみをやめさせてくれない。かといって決してステージ前方につめかけさせるような急かした感じがなく、踊っている人も寝そべっている人も、みんなそれぞれのフェスティバルを楽しむ余裕がグリーンステージを包む。
終盤のハイライトは”54-76 Was My Number”。「Give It To Me、1 Time!」のあとにジャン!と1回鳴らしお客さんもそれに応じて1回クラップ、「2 Time!」で2回…というやり取りをサビで繰り返すこの曲は私がグラストンバリーで見た際も同じやりとりだったのだが、この場ではしまいに「12 Times!」というワイルドな数字を唐突に言い出す。しかしさすが律儀な日本人、どうやらきちんとやっていた人が大半だったようで、それには彼らも驚き。曲を止め、大きなグラサンを外したトゥーツは目を丸くしてみせたあと「これをきちんとやってくれたのはこの場が初めてだよ(笑)」と褒め言葉。こんなやりとりでドヤ感に…と思っていたら再びビートは加速し始めて楽しい慌ただしさを見せた。かくしてグリーンステージのスカレジェンドfromジャマイカは終了。我々は表情ゆたかな午後のひとときを過ごした。