GREEN STAGE, | 2012/07/28 18:00 UP

ELVIN BISHOP

まさにお祭り

「スバラシイ、シゼンノナカデ、オンガクヲキケルノハ、ホントニ、サイコウデスネ!モウ、スズシクナリマシタ、イエイ!」。日本列島各地で最高気温を更新する猛暑が続くフジロック二日目。ご多分にもれず日中はギラギラの太陽が照りつけていたフィールド・オブ・ヘブンも、日の暮れるころようやく涼気がただよい始めていた。ステージ登場するなり流暢な日本語でこう語りだしたのは、エルヴィン・ビショップ本人(なんと彼の趣味のひとつが、日本語の読み書きであるらしい)。これからトロンボーンや鍵盤奏者を含む五人のバンドメンバーを率いて、ヘブンの陽気な酔いどれ君&酔いどれさん(アルコールとか音楽とか)を巻きこんで、楽しいブルース・パーティーを行うところだ。

ライヴは”Have a Good Time “で幕を開ける。聞くところによると、エルヴィン御大は御年69歳!ステージングを見ていると、とてもそうとは思えないほど、気さくでチャーミング。「ワタシノ、ニホンゴは、ホント二、ビーキュウ(B級)デス!」なーんて言われてしまって、お客さんもどっと沸いている。いやいや、B級とは。おみそれしました…。

エルヴィンの他に、かわるがわるドラムのボビーもボーカルをとる。トロンボーンのエドも貫禄十分で、合間にタンバリンを叩いている姿まで本当にクール。鍵盤担当のスティーヴが演奏するアコーディオンのメロディーもヘブンに楽しい空間をつくりだしている。尺など自由なジャム・セッションのシンプルなリズムとリフの連続が、彼らによってたまらなく気持ち良い音となって響いてくるのだ。

演奏中盤、MCのほとんどを日本語でやってのけるエルヴィンが、またしても、「ツリバカニッシ(釣りバカ日誌!?)トイウエイガ、アリマス。ワタシモ、ツリバカデス!」と語りだすと、それを聞いたお客さんも大喜び。もちろん「ツリバカ」一座が演奏し始めたのは、”Fish, Fish, Fishing”!フィッシュ、フィッシュ、フィッシング!とコーラスする部分では、お客さんにふってゴキゲンなコール&レスポンスが行われる。そのうち、エルヴィン本人がギターを弾いたままステージから退場してしまった。…あれ?と思っていると、なんとステージを降りて隣のテントから姿をあらわし、そのまま開けた柵を通ってお客さんの真っただ中に「コンニチワー」状態!うわぁー!またたく間に、ゴキゲンな演奏を続けるエルヴィンの周囲におみこしのようなモッシュの輪が起こる。そうか、これがホントのお祭り、フェスだったのね…!

軽く楽しいパニック状態となったあと、エルヴィンは戻る時にお客さんの女の子をひとりステージへと連れだしてしまい、なんとステージ上で自身のギターを弾かせてしまう。びっくり笑いの女の子と、お茶目なブルース・ギタリストに、お客さんは文字通りスタンディング・オベーション状態で大歓声だ。その後、女の子はスタッフに丁重に手を取られながらご退場。そんなところも最高にスマートで見ていて楽しい。最後はアンコールまで起こり、大喝采でライヴは幕を閉じた。

それにしても、フジロックは不思議な空間だなあーと思う。エルヴィン・ビショップがシカゴでポール・バターフィールド、マイク・ブルームフィールドらとブルースバンドを結成したのは1965年のことで、名盤『East-West』がリリースされたのは1966年。共にまだ、自分が生まれていない頃の話なわけで。年齢も国籍も全然違うエルヴィンとフジロッカーが、日本の、それもフジロックのフィールド・オブ・ヘブンで、確かに同じ空間、彼のエンターテインメントを共有していた。そんな奇跡が起きるのも、きっとフジロックならではのことなのだ。


写真:花房 浩一/文:小田 葉子
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