ついに明かされた現在進行形ダンスチューン
the musicのフロントマンであるロブ・ハーヴェイ、the Streetsのマイク・スキナード。それぞれユニットを終了した二人がタッグを組んだこのthe D.O.T.。先行公開とも呼べるような形で、フジロックの来日を果たした。特に我々フジロッカーにとっては、あのThe Musicの最後を”看取った”という感慨も手伝ったのだろう。公式なリリースはEP1枚にも関わらず、通路に湧き出るほどの人々が「おかえり」を言うべくレッドマーキーに集った。人をかき分けかき分けしないととてもではないが奥に入れない状態でテント内に入り、登場を待った。
ほぼ定刻とともに始まったステージ。ステージ背面に彼らのデザインシンボルだろうか、ハットをかぶった2つのドクロが映し出され、それをバックにロブ、そしてシーケンサーの卓の前にマイクが立つ。さあ、その進化を見ようじゃないか。オーディエンスの歓喜の声が上がった。
ショウ全般で味わえたのは、EPやSoundCloudで定期的に上がっているような彼ららしいダンスチューン。マイクが”現場”で培い、そしてロブがバンド時代からそのインスピレーションを得続けたダンスミュージックを受け止める姿勢。それが邂逅(かいこう)を見せ、新しいフォーマットへと昇華した形のようだ。例えば電子クンビア・ライクなビートの上をロブの歌が心地よく滑る”Whatever It Takes”など顕著なものだし、ハウス、ヒップホップ、ドラムンベース…おそらく先行でウェブに公開されていた数々の楽曲をさらにビルドアップしたそのサウンドに触れては、成長の二文字が浮かんだ。
バンドというフォーマットを離れ、ロブはサウンド面の表現力を広げたという印象を受ける。対して、マイクもシニカルな日常ラップとは違い、メロディーを意識してかなり頻繁に「シンガー」としての活躍もステージ上で果たしていた。二人のクリエイターが、パートナーの支えによってそれぞれのキャリアという壁を超え、一つの表現に徹している様は、なかなかに心を動かせられるものがあった。
もちろんバンドサウンドではないという時点で、芯に響く音・グルーヴの不在が気になったことも付け加えたい。ただそれは、彼らのサウンドへの探究心により早々に解決され、我々もその頃には昔を振り返る暇など無いだろう。初陣に見た成長と未来。まずは”ホーム”のフジロック出演が終わった。次はどうなる?