ジェイソン・ピアース率いるSPIRITUALIZEDがフジロックに10年ぶりに出演である。そんな彼等を見ようとレッドマーキーには溢れるほどの人、人、人が集結。それほど大勢の人が詰めかけた中で、彼等は実力通りに確かなパフォーマンスを披露してくれた。
ステージ上には、横を向いて演奏と歌を披露するジェイソン・ピアースを始めとしてギター、ベース、ドラム、キーボード、コーラス隊2人が軽い円弧を描くように7人が並ぶ。始まりは、イントロを弾いただけで大歓声が巻き起こったロックンロール・ナンバーの”Hey June”から。軽快なギターとリズムに乗せ、口ずさめるような歌が心地よく、さらにはハッピーなコーラス・ワークが高揚感を煽ってくる。好調な滑り出しで観客を早くも酔わせていく。
ただどちらかといえば、今回のライヴは全体の印象としては控えめといえば、控えめといえるものだったかもしれない。”Soul On Fire”や”Oh Baby”といった美しいハーモニーを聴かせてくれるような曲の方が主導権を握っていたように個人的には感じた。体に染み込んでいくような甘美なメロディと歌声には心がほっこりと温められる。それでもゆるやかに酩酊を誘い、サイケデリックなサウンドが渦を巻いて覚醒を促すこともあり。彼等らしさは随所でしっかりと発揮し、後ろの映像とともに幻想的な空間を造形していた。
やっぱり圧巻だったのは最後に演奏された” Take Me To The Other Side”という人が多いのではないだろうか。手拍子が起こるほどの歓迎を浴びてから、ストロボの明滅とけたたましい轟音ノイズが会場を切り裂く。この瞬間を待っていた!と言わんばかりの恍惚に溺れる人が続出で、この轟音を浴びるのはやっぱり至福。彼等を語る上では欠かせない”宇宙”を感じることができたラストに大満足だった。
SPIRITUALIZED
写真:熊沢 泉 文:伊藤卓也