何も語らずとも、音楽の熱ですべてを表現できるバンド
「―—っぽい」とか「流行り」だとか、ロストエイジの辞書にはそんな装飾的な言葉は見当たらない。いろんな機材を用いて演奏するロックが珍しくなくなってから久しいが、彼らは必要最小限の編成で活動し続けており、常に自分達の気持ちを露わにし続けている。気持ちのいいほど、真っ向から勝負しているバンドだ。
連日かんかん照りというだけあって、朝一だというのに、レッドマーキーの中はすでに蒸し暑い…。が、そんなことを一切気にもせず、開演前から集まったオーディエンス達の拍手が響き始めていく。彼らが登場して最新作の『ECHOES』から“BROWN SUGAR”の演奏が始まると、暑さに拍車がかかるように、温度が上昇していくのだが、もうむしろ、それを通り越して、清々しい気持ちにさえなってしまう。集まったオーディエンス達もすでにTシャツの色が変わってしまうくらい、大粒の汗がびっしょりだ。
演奏が終わり、メンバーがチューニングしていると、想い想いに観客からステージに向けて言葉が飛び交う。正直、何を言っているかまでは聞き取れなかったのだけど、彼らはどこにいたって愛されているなとしみじみと感じた瞬間だった。すると「ちょっと、しゃべっていいですか?」と五味からの突込みが。続けて、「いろいろ話すことを考えていたんですけど、もういいです(笑)。でも1つだけ、今日集まってくれてありがとう」と話し出す。感謝の言葉だけを送るなんて、なんてシャイなんだろうと、ニヤニヤしてしまったのはきっと私だけではないはずだ。
演奏は“BLUE”から“楽園”へ。さすが場数を踏んでいるだけあって、彼らのライヴに緊張の糸というものは皆無に等しく、たとえフジロックという特別な会場だとしても、安心だとか、タフとか、そういうポジティブな言葉しか浮かんでこないことに驚きだ。ラスト曲前のMCでは、「1個、目標にしていた場所だったので。ここで演奏できて嬉しく思います。また来ます」と伝えだけ伝える。あまり多くは語らないけれど、「また来ます」という言葉からは、まだ見えない先への強い自信さえも感じさせるほどのたくましさがあった。そして、ラストを締めるのは、彼らにとっても観客にとっても馴染み深い“手紙“。今回は最新作のアルバムからと、それ以前の楽曲とを合わせた新旧のセットというだけあって、なんだか彼らの歴史を改めて振り返っているような気にもさせられ、感慨深かった。