原発事故で産まれた怪獣バンド
今回の、ゴジラ・放射能・ヒカシューの結成には、やはり原発のことは外せないだろう。ゴジラを製作していた円谷プロは公害や放射能に敏感で、『ゴジラ』シリーズは特にそれが顕著だ。そもそもの部分で、ゴジラは原水爆によって、モスラはビキニ環礁の水爆実験(第五福竜丸で有名)によって産まれたという設定になっている。
まず現れたのが、ヒカシューの面々。念仏のような”入念”や”びろびろ”では、唯一無二の尖った音像が飛びかっていた。「前衛」という表現がぴったりくる彼らだったが、豪華なゲストミュージシャン(なんとベースには渋さ知らズより不破さんが参加!)を迎えて、ビッグバンド化すると、前衛から特撮へ、一気に流れこんだ。ギターをひずませ、ゴジラの「哭き」が響き渡ると、伊福部昭と円谷が作り上げた世界が展開してきた。
『ゴジラ』の曲は、『JAWS』と同じく、おそろしく巨大なものがだんだんと迫ってくる情景がある。それは刷りこみでもなく、低音を強調しながら、徐々に音量を上げてくるからに他ならない。
『ゴジラ』シリーズにあって、ひと際異彩を放っていたのが、『ゴジラvsへドラ』だった。「四日市ぜんそく」などの公害問題と、円谷プロが『怪奇大作戦』で培ったおどろおどろしい表現が融合した、カルトな作品となっている。しかしながら、当時の文化的側面もとりあげており、ダンスホール(今でいうクラブ)でサイケな音楽が爆音で流れていたりもするのだ。
『ゴジラvsヘドラ』からの楽曲、麻里圭子/ハニー・ナイツの”かえせ、太陽を”は、ゲストヴォーカルにキノコホテルのマリアンヌ東雲をむかえて披露された。アッパーなサイケサウンドながら、どこか暗さがあるのは公害というテーマによるものであり、そのテーマが去年のふくいち事故以降、そのまま放射能に対するアンチとなったからだ。
マリアンヌ東雲がはけて、「私たちの卵を返してください!」というセリフとともに登場したのが、姉妹ユニットのチャラン・ポ・ランタン(以下チャランポ)。揃いの衣装で「小美人」に扮したチャランポは、いつもの毒舌を封印し、役柄に徹している。始まったのは”モスラのテーマ”だった。
モスラが終わり、小春がアコーディオンをかかえれば、渋さ知らズばりのアッパーな混沌が訪れ、マリアンヌ東雲を再びむかえてのKraftwerkの”Radio-Activity”へ。テルミンが響きわたり、大勢のメンバーによって披露されたそれは重さをまとい、社会や政治を痛烈に批判していた。