ジャズサイドより急襲した最強のダークホース
まずは、このサイトの内輪話を少し。開催前の我々に毎年訪れるのが、全アクトをカバーしたいという意気込みに対しフォローの難しいものが出てしまう悩みである。実際に彼らはスタッフ内で予備知識を持ち合わせた者がおらず、最終的に付け焼刃程度の視聴しかできないまま、私が観ることとなったのである。
で、それを踏まえて申し上げますが、マジで今年のベストアクトだったんスよ!もう高らかに宣言しちゃうもんね!あまりに楽しくてどうなるかと思ったくらいの時間を、私はここで過ごすことができてしまった。
フジ直前にはブルーノートツアーを行ったという、オランダ出身のこの8人組・NEW COOL COLLECTIVE。全員スーツという欧州のおすましな装いと、それに対する裏路地から漂う猥雑な文化の芳香の混ざり具合、まさにアムステルダムの街並みそのもののような音楽を彼らはオレンジコートにぶつけてきた。
サウンドの根本はファンキーなジャズを音のベースとしながらも、ラテンミュージックを中心に多方面の音楽をたいらげて1つのフォーマットにおとしこんでいる。中でもほぼすべての曲に盛り込まれた楽器ごとのソロは秀逸で、どれだけ音をしぼめさせても最後に必ず盛大な大波にして帰ってくるという、大変に巧妙な展開を織り交ぜる洗練されたグルーヴの連続が小気味よい。
3人のリズムセクションと金管・鍵盤・弦楽器から成るその音楽は分厚く、そして激しい。すっかり夜のこの時間帯は、遠くで稲光が何度もまたたいたのだが、その空模様がお似合いといった様相が、地上で展開されていた。オーディエンスの手が声が、面白いようにあがるのだ。
それは、もちろん終わり近づくこの時間帯が高揚を誘ったのもひとつあるし、雨の影響がゼロということもあったに違いない。違いないけれど、ステージ前方を中心にあまりにも盛り上がりすぎていた。ティンバレスの金属的なリズムの間に迫り寄ってくるドラムの渦、ベースとローズピアノの妖しげな脈動、熱帯夜のJAZZをつかさどるホーン…いくつもの要因を重ねるというよりも、すべてがチェーンリアクションを起こしてトランスにも近い歓喜興奮の場に仕立てたと言えるだろう。ラテンミュージックとスウィングがルームシェアしたような”Con Que”の中で、歌の一部がオーディエンスから自然発生したことを受け、サックス&その時ボーカルを務めたひとり、ベンジャミン・ハーマンの顔がほころんだのが印象深い。
ラストはショパンの”葬送行進曲”のスカ風カバー。気付けば雨に備えて着てしまったレインジャケットの中が汗だくになり、呆然としてしまうくらいの壮絶さ。Twitterなどを見ても、偶発的に居合わせた結果、しっかりと虜になったという人も多いようだ。まったく、こういったことがあるから、フェスティバルってやめられないんだよな!