ただ純粋に「音楽を楽しむ」という方向へ
10年にも同ステージにて登場している、クオシモード。どのジャンルにおいても大体邦楽と洋楽とでリスナー層が二分化されがちな今だが、彼らはクラブ・ジャズ界においてワールド・ワイドに活躍しているジャズ・バンドだ。ジャズや洋楽をあまり聴かない人のことも、一度はそっちの音楽に引っ張ってくれそうな、要は橋渡しになるであろう音楽である。
ピアノの平戸祐介、パーカッショニストの松岡”matzz”高廣、アコースティック・ベースの須長和広、ドラマーの今泉総之輔のメンバー4人に加え、今回は管楽器2名がサポートとして参加。毎回かもしれないが、彼らが登場して曲が始まると、すぐさまオーディエンスから拍手喝采が鳴り響いていく。たとえ、曲をまったく知らずとも、身体ひとつあればすぐに踊れてしまうのが彼らの音楽の嬉しいところ。なぜならバンド自体が感情の揺らめきとか、自分達の内面を表現したいというより、「音楽を楽しむ」方へと向かっているから。曲がものすごく後を引いて困るということもないし、1曲ごとに真っ白な耳で聴くことができるのだ。お洒落とかセンスというイメージも強いけれど、実際ライヴはラクにかつラフに耳に入ってくる。音に酔いしれたい、ただそれだけでいいのだ。
「みなさまもそうかもしれないけれど、僕たちはもう脱水症状寸前です」。そんな松岡”matzz”高廣のMCが入った後、複数の観客達がメンバーに何かを伝えようといろいろ発していく。メンバーも返答していくのだが、さながらそれはもうメンバー達とのトークセッションといっていいくらい、よい雰囲気だ。また、ここに集まっている年齢層は幅広く、ワイン片手にゆったり踊り人もいれば、上半身裸で日焼けもなんのそのという若者と、本当に様々。その分、同じ時間を共有しているだけでも、「何かが待っているかも」という気持ちにさせられるのが嬉しい。
後半には最新アルバムからの曲を。アップテンポながら、少しムーディーで、大人の色気のある楽曲なのだが、だからといって、ネガティヴとかそういう負とはまったく無縁なのがやはりいい。その後もまったくテンションの高さは変えず、持ち時間ギリギリまで、勢いよく駆け抜けてくれた。