やさしさは一服の清涼剤
昼前にちょっと雨が降ったものの、今のところ天気が大きく崩れることもなく、暑いままの苗場。フジロック3日目のレッドマーキーには、マイケル・キワヌーカが登場した。本国イギリスでは注目のアーティストらしいけど、初めて日本の地で演奏するのはフジロック、そしてレッドマーキーだった。本来ならもうちょっと大きいところの方が相応しかったのかもしれない。もしかしたら、こうしたステージで観ることができる最後の機会なのかもしれないのだ。
レッドマーキーは8割くらいの入りだろうか。端にいると、時折隙間から入ってくる風が心地よい。ライヴは予定時間きっかりに始まった。マイケルを中心にギター、ベース、ドラムスという編成である。そのため”Tell Me a Tale”や”I’ll Get Along”の印象的なフルートなどが聴けなかったけれども、このシンプルさはマイケルの声を生かすものであった。アルバムではアコースティックな感触が強いけれども、マイケルがエレクトリック・ギターを手にする機会も多かった。
そしてやっぱりマイケルの声のすばらしさ。ソウルとフォークが交錯し、少しハスキーで優しさと哀しさを感じさせる声は、フジロックの会場に涼しさをもたらしてくれたのだった。そして、このライヴで感じたのは、「思ったよりロック」だということ。それは中盤にジミ・ヘンドリックスの”May This Be Love”をカヴァーし、演奏が徐々に激しくなり、盛り上がっていく姿をみせたからだ。そして、ラストの”If You Dare”でも激しくギターを弾きクライマックスを作り上げたところに彼にもロックの心が深く刻まれていることをアピールしたのだった。もちろん”I’m Getting Ready”、”Home Again”でのやさしい響きは格別。次はどこで観られるのだろうか。
MICHAEL KIWANUKA
文:イケダノブユキ・写真:Julen Esteban-Pretel