GREEN STAGE, | 2012/07/29 20:30 UP

THE SHINS

満足が支配した至福の空間

3日目レッドマーキーのトリを務めるThe SHINS。客入りは裏のRADIOHEADに取られてほとんど…?と心配していたが、たどり着いてみれば確かに影響を受けていないとは言いがたいが、彼らを待ち望んでいた人は少なくはない。序盤にはテント内の7割は人がおり、朝方のような明朗さを持つ”Simple Song”などでみな小気味よく身体を揺らしていた。

このバンドとフジロックのゆかりは浅くない。バンドを率いるジェイムズ・マーサーは2010年にはデンジャーマウスとのユニットBROKEN BELLSで来ているし、THE SHINSとしても2007年が初登場なので2度目である。ただし、今年のTHE SHINSは07年に比べジェイムズ以外全員別のメンバーに変わっている。その変化は果たしてどのように表れていたであろうか。

実際にステージが進行するにつれ、その違いは一目瞭然に感じた。前回に比べて特に傑作『Wincing The Night Away』の曲が、幻想と日常のいいとこどりのような本来の感覚に近くなった印象を受ける。語りかけるようなショートソング”Pam Berry”からシンガロングソング”Phantom Limb”の流れにおけるの再現度は、ビートよりもサウンドの心地よさに比重が置かれ、我々もついつい口ずさみたくなって、リズムを体に宿したくなってしまう。これはBeckのツアーギタリストであるジェシカ・ドブソンはじめ、新メンバーの影響なのだろうか。それとも家族ができたというジェイムズ自身の変化なのだろうか…。きっかけはさておき、レッドマーキーはふしぎとあたたかかった。

特にこういったフェスで思うことだが、ステージという位置から運ばれてくるもの、沸き起こさせてくれる感情はアーティストによってまるで違うものになる。興奮したり、うっとりしたり、重々しくしずんだり、かと思えばとにかく声を上げたくなる気持ちにさせたり…。何ひとつとして同じものがなく、受け手である私たちにいろいろなものをくれる。そういう点で言えば、THE SHINSが引き出してくれるのは「嬉しさ」だ。

屋根のせいで開放感がないと嘆く人もいるマーキーだけど今はちょうどいいかもなあ、レディへ目当てで人が1曲ごとに離れてしまうけれどこれはこれで精鋭たちが残ったみたいでいいなあ。ライヴを味わいながらそのときの私の気持ちを素直に書くと、なんだかずいぶんおめでたいなと気恥ずかしくなる。が、すべてのマイナスを些細として押しやり、「だいぶ気持ちいいねー、いやー音楽っていいなあ」のひとことに昇華する妙な作用に繰られる時間だった。中盤の”It’s Only Life”なんてまさにそんな心地の代表みたいな1曲で、私や周りの人たちは、包まれるうれしさにたゆたっていた。

最終的にはずいぶん人数としては減ってしまったが、あの場に居合わせた人びとの満足はきっと随一のものになっているだろう。次回はぜひ違う環境とタイミングでの彼らも見てみたいものだ。


写真:加藤智恵子 文:ryoji
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