緩急自在のにぎやかし
前夜祭にて、ダークホースとしての頭角をあらわしたオンダ・バガは、非公式を含めると10を超えるライヴが予定されている。「アンクルオーウェン」というレーベルの色とはいえ、これはとんでもなくタフなことだ。
2日目にして、すでにクセになっている人もいたようだ。”オンダ・バガのテーマ”で幕を開けたらば、しっかりと彼らの曲たちに対してレスを返している。カホンがぬくもりを叩きだし、コーラスがたゆたう。緩急を使いわけたセットに、心の鍵を外し、身をあずけていた。
前夜祭以降、このオレンジコートまでの間に、ザ・タイマーズの”デイ・ドリーム・ビリーバー”は演奏していなかったが、ついにその禁をといた。ちょうどその頃、隣のヘブンでは、忌野清志郎(キヨシロー)の相棒である仲井戸麗市(チャボ)の麗蘭がスタンバイしていたらしく、ヘブンから駆け足で流れてきたオーディエンスもいたそうだ。
この曲は、表面だけのカバーではなく、フジロックとキヨシローの間に存在していた特別な感情を理解したうえでのカバーだ。むしろ、それでなければカバーする意味がない。彼らはとことんまで理解し、こちらの想いの上をゆく、”Mr. Fuji Rock”という曲名をつけて送りだしたのだった。地球の裏側からやってきたONDA VAGAに踊らされることはあっても、泣かせられるとは思っていなかっただろう。
“マンベアードの歌”では、スペイン語歌詞のカンペが申し訳程度に差し出される。実にくだらなく(だが、そのゆるさがおもしろい)、レーベル側には、カンペに書き込まれたカタカナを追わせることによって、オーディエンスのコーラスを誘発するという狙いがあったのだが、まんまとあては外れた。オーディエンスの中では、ネタのひとつとして楽しむものとして定着していたのだ。
ONDA VAGA
写真:府川展也 文:西野太生輝