GREEN STAGE, | 2012/07/28 17:30 UP

CHE SUDAKA

フジ12で一番の大騒ぎ

前日の深夜パレスでのチェ・スダカは、機材トラブルを逆手にとり、みなの記憶に残るであろう衝撃の幕引きをした。それを見た人間が、「とんでもないものを見た…!」と口コミとして広めたのかは定かではないが、この日のオレンジコートは人で埋め尽くされていた。

予備知識なしのオーディエンスを巻き込む力量は、他のどのアーティストよりもあるだろう。なにせ、バルセロナでの生活費を工面する手段として、ストリートで結成されたという背景があり、以前に行ったインタビューでは、「チェ・スダカは生き方そのもの」とまで言い切っている。

フェスに限っても、フォルクローレから、完全なアウェーともいえるメタルにいたるまで出まくり、大盛り上がりを引き起こしてきたというから、ラテンがそれなりに認知されているフジを盛り上げることなど、お手のものだ。

かくして、チェ・スダカは、ラテンの目玉として大きな期待を背負い、ハリー・ベラフォンテの”Banana Boat(Day-O)”に合わせて叩かれる手拍子の中、オレンジのステージが幕を開けた。曲は10年目の節目を示す”10″、クンビアのリズムが響き、アコースティックギターとヴォーカルのレオが、弾き語りのような形で歩きながら出てくると、ボタンアコーディオンのセルヒオ、エレキギターのヨタ、ベースのセバスチャン、MCのカチャの順に登場した。

クンビアに合わせて、オーディエンスは手拍子を叩き、そのまま”Almas Rebeldes”へ。カチャの早口MCに続くあいの手も、前方を中心に伝搬してゆく。引き続き、『Mirando El Mundo Al Reves』から、表題曲へと移行。最後にラガを交えて、一旦のブレイクを入れた。この間、チューニングなどは一切なしで、「ルンバ・カタラン(カタルーニャ産のルンバ)」で走り抜けていた。

セルヒオが肩掛け式のキーボードを構えると、彼らの日本語曲”Ona Kasuita”となった。ボタアコがないという事実は、フォルクローレの匂いを取り去り、爆走していくことを意味している。この曲は、「ワタシハ、オナカスイタ」と「シアワセニナリタイ」しか歌詞がないため、日本人であれば、初めてでも盛り上がってしまう。当然のように、モッシュが沸き起こった。

“Bihotza”から始まった、初期アッパーチューンを展開させれば、やりたい放題だ。”La Bamba”などの馴染んだリフや、ダブルのリズムをこれでもかと盛り込んでくる。音源では聴かせる”Serás Feliz”も、Aメロから「オーォ!オーォ!」とレスポンスを根こそぎ収穫してしまうようなアレンジがなされ、ついにモッシュサークルが出没した。それでもなお騒ぎは止まらず、”Silence Raval”では、レオが口の前で1本指をたてて「シーッ…」とアピールし、横ではカチャがしゃがむようにうながした。「しゃがませてから、いっせいにジャンプ」という、ヨーロッパのラテン・メスティソ・バンドの常套手段がここで炸裂し、そこから先のオーディエンスは大暴れだ。一度押さえ込まれてからの展開は、スイカに塩を振りかけることで、かえって甘く感じさせるようなもの。反動だ。そういえば、どこからかステージ前にやってきたスイカ(本物)は、モッシュに揉まれて、木っ端みじんとなっていた。

ひとしきり盛り上がった後には、”Será Posible”で落とし、レオ以外のメンバーが楽器を起き、全員が前面に並んで肩を組んだ。レオのアコギと合唱のみで届けられたのは”Sin Papeles”だった。この曲は、The Policeの”Englishman In New York”のカバーなので、聞き慣れた人もいるだろう。オーディエンスの手拍子は、あっという間にオレンジ全体へと波及していった。

彼らにとっての代表曲ともいえる”Mentira Politika”を終えると、カチャがオーディエンスとのやりとりをはじめだした。「楽しいか?楽しいよな!イイね!じゃあ次はセルヒオだ!」の言葉からなだれ込んだのは、アコーディオンが前面に押し出されたクンビア、”La Risa Bonita”。ある意味、この曲は、カチャとオーディエンスとのやりとりがキモの曲となっており、間奏となるごとにコール&レスポンスが繰り返されていた。

“Cosmopolitan Time”はサビが「チェ!ス!ダ!カ!」と、何ともわかりやすく改変され、猫も杓子も踊りだすといった始末。いつの間にやら”Taliban”に変わり、変調をへて、”Alerta Bihotza”へと変わっていった。最後は、SEを鳴らし、横一列に並んでの大団円。話題をさらったのはOnda Vagaかもしれないが、もっとも騒ぎを起こしたのは、彼らで間違いないはずだ。

10
Almas Rebeldes
Mirando El Mundo Al Reves
Ona Kasuita
Bihotza
Serás Feliz
Todo Vuelve
Silence Raval
Será Posible
Sin Papeles (The Police Cover)
Que Viva La Gente
Mentira Politika
La Risa Bonita
Bam Bam
Quiero Más
Cosmopolitan Time
Taliban
Alerta Bihotza
Immigrant Punk(Gogol Bordello Cover)
Cosmopolitan Time


写真:Julen Esteban-Pretel 文:西野太生輝
同じカテゴリの記事
最新レポート
ENGLISH ver.
FUJI ROCK FESTIVAL'12 SMASH
FUJIRICKERS.ORG facebook twitter SMASHING MAG HUNTER FUJIROCKERS WEB SHOP

STAGE|ライブの模様を速報!

未来は描かれてはいない。描くのは私たち。

MORE FUN|会場から楽しいレポートをお届け

TWITTER|FUJIROCKES集合!みんなのツイート

▲PAGE TOP