ムスタングのロカビリー・ショウが終わり、再び緩やかな空気を纏ったフィールド・オブ・ヘヴンに、サーストン・ムーアやデヴェンドラ・バンハートが絶賛しているというジ・エントランス・バンドが登場した。
ギターのガイ・ブレイクスリーはサイケ界隈では名の通った人物で、ベースのパズ・レンチャンティンはア・パーフェクト・サークルにズワンと、名の知れたバンドでも活躍している。ドラムスのデレック・ジェイムスは新進気鋭の若者ということだが、手数が多く、その粒のひとつひとつが圧力を持っており、ベースには観る者に覆い被さるような重さがある。そんな強靱なリズム隊に歪んだギターが重なると、ザラついた岩肌のイメージが浮かぶ。ループする轟音はやがて崩れ落ち、荒れた世界の像を結ぶ。各パートのアンプの出力がマックスなのではないかと思うほどの力強さだ。
サウンドシステムを酷使する轟音は、60〜70年代の荒削りなサイケを、ゼロ年代も早10年となった今の時代に復活させている。ガイは、まるでジミ・ヘンドリクスのようにふるまい、クリームのようにギラギラとしていて、その声色はU2のボノのようでもあった。
写真:佐俣美幸
文:西野太生輝