ニワトリが先か、卵が先か? そんな論議をよく耳にするのだけれど、観ているうちに、どんどんその一文がぐるぐると頭を駆け巡った。音楽はどこで生れ、どのように形を変え、どこで交わり、どんな風に変化し、今の音楽へとつながってきたのか?そんなことを答えられる人なんていないだろう。ちょっと大げさに表現してしまっているけれど、その疑問の始まりは、ステージで演奏される楽器にあった。
ごくごく個人的にスコットランド方面の音楽シーンが大好きで、その音楽には、ギターがあり、アコーディオンがあり、バンジョーがある。スコットランドのクラッシック・サウンドを受け継ぐフォークソングだ。そして今日、ヘヴンに
登場したKitty Daisy & Lewisはアメリカで生まれたロカビリーやブルースをベースとしたバンドなのだ。どちらも、その土地の音楽を根幹として昇華させた音楽なのに、その音楽の源には昔からバンジョーがあり、アコーディオンがあるのだ。フォークが先か、ロカビリーが先か……そんな疑問がぐるぐる巡り続けているうちに、そんなことよりも、それらの音楽が重なり合う瞬間がどんどん見つけては、もっともっと自分の知らない音楽を知るべきだ、なんてことも同時に思った。だから、音楽は面白いのだ。
真っ赤なワンピース、白地に柄のワンピースというキティと、デイジーが1本のマイクを分け合い、アカペラで歌う姿はまさに合わせ鏡。女性の声というのは重なり合うことにより、合わせ鏡のなかに、もしかしたら鏡のなかの鏡に映る自分のなかに、もしかしたら、別の誰かが1人入っちゃっている錯覚をもたらす。キティとデイジーが姉妹なれば、どこかでそんな錯覚も錯覚でないような気分にさせてくれる。
コントラバス、スティール・ギター、ドラムにバンジョー、そしアコーディオンにとステージの4人が楽器を持ち替え、演奏するは、ロカビリーにブルース。忠実にそれらの音楽のルールを根底に守りながらも、ただの解雇主義、ただのモノマネになっていないからこそ、今、この新しい音楽が乱れるように生まれてきて、デジタル化している環境が当然となった今の人たちにも、こうやって彼らの音楽を受け入れ、楽しまれているのだ。
写真:直田亨
文:ヨシカワクニコ