フジロックの一番の楽しみと言っていいかもしれない。それは数年おきに来るオゾマトリの登場である。苗場で彼らと遊ぶこの瞬間はフジロックで目にする数多のライブの中でも極上のひとときだ。しかしながら今回はオゾのライブの模様を伝える役目。飲まないと心に決めているのに、隣のお客さんからアルコール飲料が差し出される。オゾマトリのライブを初めて見た時から必ずと言っていいほど、抗えないそこでの偶然の出来事や出会いがある。本当に不思議なパワーを持ったバンドなのだ。
開始10分前には、後ろの方まで人で埋め尽くされていて、音が鳴ると待ってましたとばかりにみんなはしゃぎ出す。そうかと思えば、モッシュやダイブでもみくちゃになるわけでもない、このステージ特有の自由で平和な空間なのだ。「僕たちはロスからきたオゾマトリです。盛り上げに来ました。」たどたどしい日本語でMCするのはパーカッションのヤマグチ・ジロー。踊りたくってうずうずしてるお客さんは、たくさんの手拍子で彼らを迎える。「ボクたちの街の曲」と”city of angels”を演奏。「4回目のフジロック」彼らの音楽はフィールド・オブ・ヘブンによく似合う。”La Gallina”が始まるとみんなジャンプ。振動が地面から伝わってくる。
そして、今年発売された新譜「Fire Away」から数曲、”Malagasy shock””it’s only paper”、”45″、”Nadas Por Free”が披露され、バンジョーとパーカスが特徴的な”Ya Viene El Sol”、 ”La Temperature”、 “saturday Night”など定番となった名曲が進むに連れて、会場はヒートアップする。「前も後ろもみんなジャンプだよ!」MCにも表れている通り、オゾマトリの音楽は遠くの方で観る人まで幅広く取り囲む。だから初めてみるからって、知らなかったからってそんなことは関係なくみんなが楽しめる。フジロックだからこその出会いがここにある。
そして最後は、お決まりのあれ。メンバーがステージから降りて会場を大行進。それに従って大きな人だかりと大行列ができる。この光景、何度も見てるけど、これを見なければ気が済まない。ハイテンションで終わらないオゾマトリのライブを見ることができて本当に幸せだった。
写真:北村勇祐、花房浩一
文:千葉原宏美