前夜祭のレッド・マーキー1発目に登場したムスタング。触れればすぐさま感じてしまう極度の興奮状態だったオーディエンスに、いきなりレトロな音を叩きつけて、華々しいスタートを切った。
前夜祭と変わらず、自らの名を冠した”ムスタング”で始まったフィールド・オブ・ヘヴン(以下、FOH)でのライヴ。跳ね馬(ムスタング)が走り出せば、場に充満していた緩い雰囲気は即座に消え失せる。ボ・ディドリーが創りあげたビートを膨らませて、激しく、時に優しく…とライヴのリズムを作っていく。ジャン・フェルジヌがキーボードに向かえば、白く輝くグレッチは背中へと回り、そのヘッドの先は地を指して、いかにもストレイ・キャッツのジャケットでみたような、ロックンロールのイメージと重なる。
立ち姿やプレイスタイル、煽りやファッションに至るまで、ロックンロールを意識しているのが彼ら。ジャンがおもむろにコームを取り出し、リーゼントを整えた時には、ステージ前から歓声が沸き起こった。ロックンロールのイメージといえば、映画『アメリカン・グラフィティ』で見られるような、トッポさなのだ。
とはいえ、彼らはまだ20代前半で、オールディーズを意識しながらも、現代っ子の象徴ともいえるゲームの曲(『ファイナル・ファンタジーIV』より、”チョコボのテーマ”)をロカビリーにアレンジするという冒険心も持ち合わせている。それでも、オーラスに持ってきたのはやはり、ルーツのディドリー・ビートだった。
写真:佐俣美幸
文:西野太生輝