クリスタル・パレス・テントに足を踏み入れれば、人の密度から来る湿気で即座に眼鏡が曇るほど。思えば昼間、フィールド・オブ・ヘヴンを通り過ぎようとしたときだった。人の流れが完全に止まっていたため、足踏みついでにステージへと意識を向けると、ジャズを基本に、ファンクにロックにと、奔放に駆け抜けるアーティストがいた。それが、トロンボーン・ショーティ、20代半ばでありながら、グリーン・デイやレニー・クラヴィッツ、さらにはU2とも共演歴があるというから、末恐ろしい若者だ。
スタジアムクラスのアーティストとの共演を果たしてきたため、ステージの魅せかたは心得ている。コール&レスポンスもそつなくこなし、トロンボーン〜という名前でありながらもトランペットを多用したセットで、曲のブレイクにさしかかればマウスピースから口を外し、手振りを加えて場のテンションを指揮していく。
彼のバンド、オーリンズ・アヴェニューがそれぞれのテクニックを競ったかと思えば、すかさずトロンボーン・ショーティがシャウトを被せてフロアへと放り込んでいく。重さも速さもありつつ、魅せかたまでもを心得た、全方向型アーティストといっても過言ではないだろう。
ステージとフロアが渾然一体となって渦巻くグルーヴは、オーディエンスをテントに呼び集めて、当然のように入場規制となっていた。フィッシュボーンのアンジェロ・ムーアが乱入したりと、熱気が凄まじすぎて、涼みに出る者も多数。オーディエンスからはアンコールの要求も飛び出し、とっておきのセカンドライン・ファンク、”聖者の行進”をかましてフジを締めくくった。
写真:直田亨
文:西野太生輝
JVC Cheers Neo with Chata & Miwa, presented by JVC Force TYO |