もし、今、私が音楽を始めるとしたら、ギターに、ベース、キーボードにドラム、そしてボーカル+プラスα……きっとバンドという形から入ると思う。それは、これまで私が触れてきた音楽という経験によりいつの間にか根付いた固定概念。ドラムとキーボードで音楽でも音楽を成立させているMatt & Kimを知った時は、この頭でっかちな固定概念にがっかりしたもので。
あいかわらずの曇り空、ステージ前のひまわりも指標となるお天道様の姿が見えず、困っている様子。そんな困り顔のひまわりに、太陽はここよ! とばかりに、バンド名そのままになマットとキムの2人が坂の上まで埋め尽くすアバロンに、何のよどみもない最高の笑顔で、早速、ドラムに乗ってお天道様を指し示すかのように高らかと天に向かって指をかざした。今日の始まりは”Daylight”、まさに今、求めているものなのだ。
”みんなはただ ダダダダって言えばいいの、それだけ”と始まった”Lessons learned”。ニューヨークの街中を闊歩しながら、マットとキムが1枚ずつ服を脱ぎ、最後には全裸で警察が2人を捕り押さえるというゲリラPVで話題にもなった。(後にはエリカ・バドゥがこのPVにインスパイアされ、自身の曲、”Window Seat”で同じ構成でPVを作ったのは有名な話。)Matt & Kimは、含み笑いをしながら”もう一度クローズアップするわ”と例のアレ的にあっけらかん。ドラムに立ち、オーディエンスをあおり、手拍子をかき立て、とうとうスピーカーの上に立っては、満面の笑みで天をかざす。
”Lessons learned”のPVを観ていると、唐突に繰り広げられる脱衣行為に驚く間もないポカーンとした表情の街の人たちが次々と映し出される。それはまぁ、まっとうな反応にすぎない。常識的なことを考えると、マットとキムが気狂いのようにも見える。法律に触れるという点では、それはしてはならない行為だけれども、彼らにとって意味や目的のある行為ならば、その行為を否定する権利はない。PVでの表現は極端ではあるのだれども、自分達がMatt & Kimであり、Matt & Kimであることを決定する権利はMatt & Kimの意思であるとするならば、納得ができるのだ。
初日の苗場食堂でのライヴは残念ながらキャンセルとなったけれど、今日、アバロンでライヴを観た人はもちろん、見逃した人には、もう1度チャンスがあるのだ。明日のホワイト・ステージ、11:50。みなさん、集合よろしく。
写真:横山正人
文:ヨシカワクニコ