凛としながらもどこか憂いを感じる、阿部芙蓉美の歌声。まるで耳元でささやかれるように、彼女の音楽を身近に感じられるライヴだった。それほど胸の奥深くまで染み渡っていた証拠だろう。
北海道出身の女性フォーク・シンガーである彼女は、数々のCMソングを歌っていることでも知られている。デビュー時から注目していたアーティストなだけに、フジロックのステージに立つと聞いただけでも喜びを感じられた。きっとアバロンのステージにもピッタリ合うはず。そう思いながら、ようやくこの日を迎えることに。
ライヴがスタートを切ると、汗ばんだ体を癒してくれる気持ちのよい風が。そこへ彼女のハスキーな声が合わさり、より極上の空間へと変化していく。また、初盤に披露された「ドライフラワー」は、鼓動も伝わりそうな静けさを感じる楽曲。メロディを頭の中でなぞりながら、いつの間にか彼女が息を吹き込む歌声に集中してしまっていた。彼女の歌は生きているかと思えるほど繊細だ。
また、純粋な詞が印象的な「開け放つ窓」では、愛情に包まれたステージを披露してくれる。その場にいるだけでも、次第に誰かを想う気持ちが溢れ出てくるのが分かった。まるで愛で満たされるよう。そしてラスト曲は、8月25日にリリースされるシングル「空に舞う」。どこかに旅をしたくなるような楽曲で、最後を締めくくってくれた。
新シングルの発売日となる8月25日には、渋谷にあるB.Y.Gでワンマン・ライヴも行なうとのこと。彼女の新たなる出発を、この目でしっかり見ようと思っている。
写真:船橋岳大
文:松坂愛