裏にフィッシュボーンがブッキングされたのは誤算だった。ラテン圏のバンドは、異なるジャンルをいろいろと混ぜることが多く、黒人音楽とパンクを結びつけて、ひとつのシーンを作ったフィッシュボーンとの共通点は多い。ひょっとすると、ライヴ直前まで悩んだ人も、それなりにいたのではないだろうか。現に、ラ・ルーダ側のスタッフも、「フィッシュボーンが見たい」とタイムテーブルを見ては嘆いていた。
どちらを選択したとしても音を浴びたら最後、ライヴを抜けることは難しい。それほどに衝撃があり、魅力があり、贅沢な二者択一だった。フィッシュボーンは07年のリベンジということもあって、気合いも十分だったはずだが、ラ・ルーダがステージで生き生きと弾けている間は、少なくとも自分の頭からは消えていた。
ラ・ルーダは、フランスのソミュールから来たスカとスウィングを主体としたバンドだ。マノ・ネグラの再来とも言われているそうだが、動きがいちいち格好よくて、サマになる…そんな、しゃれた感じからネグレス・ヴェルトにより近いかもしれない。メンバーの顔には皺が刻まれていて、見た目にはベテランの雰囲気を醸しだしているが、まだまだ落ち着いてなどいない。
ステージをところ狭しと動き回り、身のこなしやモニターのスピーカーに足をかけて、オーディエンスの胸へとダイレクトに熱を伝えてくる。フランスだけあって、ミュゼットなどの要素が入っていたりと懐の深さは計り知れない。最後にはハードロックに負けない重さのイントロから、ホーン隊へと繋げ、渋い声でコール&レスポンスを誘う。もはや、誰もタイムテーブルの被りには悩んでいない。目の前で起こっている狂乱で泳ぐことだけに集中していた。
様々な音が絡むお祭りバンドは、そもそも通りすがりの者を巻き込むことが多い。ぶっ飛ぶような、未だ体験したことのないライヴを見てみたいと思っているならば、オレンジ・コートにブッキングされる、「誰だコイツら?」と思ったアーティストをかたっぱしからチェックすることを強くすすめる。
写真:岡村直昭
文:西野太生輝