伸びやかでパンチのある歌声で魅了したSuperflyの後には、ASHのロックで活気づけ。芯の通ったポップ感と心地よい疾走感を伴って鳴らされる彼等のロックを真昼間から浴びられることにまず感謝したい。今回はサポートに4月の来日時と同様にBloc Partyのギタリストであるラッセルを含めた4人編成でのライヴとなる。4月の時にも好評を博したというこの4人が融合していく姿を目の前にすることができると思うと、胸の鼓動は一層高鳴るのは無理もないだろう。
「A Life Less Ordinary」から「Goldfinger」と畳みかけるように噴射されたロック・サウンドがグリーン・ステージを包めば、少しぐずついた空模様も関係なしに一気に熱気を帯びていく。軽やかなポップ感と純真な美メロ、そしてティムのいかにもUKらしい芯の通ったヴォーカルが耳にこびりつけば、エッジを立てて攻めるラウド・ギターに重厚なリズム隊が加わり、体を気持ちよく持ちあげていく。ひとつひとつのピース、それぞれの楽器が美しい輝きと味を出していることもそうだが、強固に結束した時の強さには惹かれるものがある。そこがASHの良きところだと個人的には思う。グッと響く誠実さがサウンドからにじみ出ていることも巻き込んでいく力がある証拠だろう。立ち止まって熱気を感じていったお客さんも結構多く見受けられた。また、ハードロックやメタルばりのギターソロが咲くこともニューウェイヴ風のシンセが炸裂することもあり、芯のある演奏にはいろいろと隠し味が施されている。ライヴが進めば進むほど、演奏自体にキレが出て、アンサンブルが研ぎ澄まされていったこともあげておきたい。ラッセルが何も違和感なくASHの面々と共存していたことに嬉しさを覚えたりもした。
代表曲のオンパレードであっただけに盛り上がりは相当なものまで膨れ上がっていたと思う。「Kung Fu」の扇情性は確かなものであったし、ダイナマイト級の破壊力を持つ「Orpheus」の爆裂アンサンブルのカッコよさには鳥肌が立つほどであった。そして、熱気を帯び続けた会場に対して、最後のご褒美として持ってきた「Burn Baby Burn」が本日のハイライトだろうか。揺らめく美しいアルペジオに、煌めき燃え上がるバンド・サウンド、そしてティムの歌声が感動と昂揚の彼方へと先導していく屈指の名曲に会場のボルテージは最高潮に達していた。演奏後には4人が肩を組んで客席のほうに向かって一礼。見応えを感じることができたASHのライヴはこのようにして幕を閉じたのであった。
写真:穂谷益代
文:伊藤卓也