2日目グリーンステージのヘッドライナー(その後にスペシャル・ゲストとしてクリス・カニンガムが登場する)を飾ったのはロキシー・ミュージックである。ジョン・フォガティ後から降りだした雨は一時期強くなり、地面はぬかるむ。お客さんのテンションは微妙なものになってしまった。正直、満員とはいえないけど、おれにとっては、フジロックでロキシーを観ること自体が夢のようなことなので気にしない。
少し時間が押してバンドが登場する。ブライアン・フェリー、フィル・マンザネラ、アンディ・マッケイのオリジナルメンバーと、オリジナルメンバーで一時期バンドを離脱していたけど正ドラマーの座に返り咲いたポール・トンプソン、黒人のコーラス嬢4人、ベーシスト、サイド・ギターに若手っぽい男子、キーボードに最近ずっと関わっているコリン・グッド、ブライアン・イーノ(電子音を出す)とエディ・ジョブソン(ヴァイオリン)の役をやるのは、セクシーなコスチュームに身を包んだルーシー・ウィルキンズという女性である。
まずは、”Re-Make/Re-Model”で始まる。スクリーンには、過去のアルバムジャケットなどのロキシーのエロ名場面が次々と映し出されていく。後は、ベスト・オブ・ロキシーというような選曲で、前半と後半は激しめで、中盤は比較的まったりとした曲を並べた。アンディのサックス、ピアノ、ヴァイオリンが奏でる”Tara”から、長いピアノソロを経て”A Song For Europe”に入っていくところが、非常に美しい。霧に包まれ、ひんやりとした空気が漂う苗場に染み込むようだった。
ジョン・レノンが亡くなったときに追悼として発売されて、イギリスで1位になった”Jealous Guy”は、フェリーの口笛がいつ聴いても切ない。この曲の次から再びテンポアップ。昨日、!!!(チック・チック・チック)がカヴァーしていた”Virginia Plain”。「恋はドラッグ」とフェリーの美学を象徴したような”Love Is The Drug”と続き、”Editions Of You”では、なんと布袋寅泰がゲストで登場。ギターを手にしてマンザネラと共演する。彼自身98年以来(?)のフジロック出演であり、ロキシー好きを公言していたので念願のステージだったことだろう。フェリーのソロで大ヒットした”Let’s Stick Together”(原曲はWilbert Harrison)、最後の”Do The Strand”まで、3曲布袋は参加していた。
フェリーのステージパフォーマンスは相変わらずのもので、変なクネクネ踊りとか全く変わらない。美しい音響、暗い世界観(”If There Is Something”、”In Every Dream Home A Heartache”など)、思わず笑ってしまうアクションなど、いろんなものが混然一体となったフェリーのワンマンワールドが、苗場の山の中でも存分に発揮されたステージだった。もっともっとたくさんの人たちに観てもらいたかったけれども、おそらく初めてロキシーに触れる人もいるかと思う。そういう人に何か残るライヴになったら本当にうれしいと思う。
写真:熊沢泉、文:イケダノブユキ