その場にいるだけでも、思わず顔が緩んでしまうライヴ。フジロック内で最も大きいステージにも関わらず、DONAVON FRANKENREITERのステージは常にアットホームな空間が広がっていた。
なぜかTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」がSEとして流れ、集まったオーディエンスのボルテージがアップ。けれど当の本人は、いたって自然体のままステージに登場。そして演奏がスタートすると、輝かしい音たちがどんどん散らばっていく。思わず体を揺らしてしまうほど、リラックスできる歌とサウンドだ。ただひたすら、音に身を任せていたように思う。
夏にピッタリ合うナンバーを数曲披露してくれたところで、ステージ後方に用意していたクーラーボックスからビールを手にする彼。すると手に持ったビール缶を観客に渡し、乾杯するなんてことも。彼が誰からも愛される理由が分かった気がした。また、覚えやすいメロディが特徴的な「Free」に入る前には、数多くのビーチボールが観客のいる場所へと投げ込まれていく。ビーチボールを空高く上げながら、大合唱していくオーディエンスたち。気付くと自分も一緒になって、合唱に参加してしまっていた。彼の音楽は、とてつもなく幸せな雰囲気が漂っているのだ。
後半戦に演奏された「It Don’t Matter」では、ステージを降りてオーディエンスにマイクを向ける彼。しかもひとりの観客に歌わせてしまうという、とびきりのサプライズを用意。しまいにはマイクごと渡してしまい、一人ひとりたらい回しに歌う一幕も。見ているだけでも、至福の気分にひたれる時間だった。
一瞬にして人を笑顔にしてしまう彼のステージ。こんなにもハッピネスに満たされるライヴに、立ち会えたことがなにより嬉しい。
写真:穂谷益代
文:松坂愛