怪物だった。まさしく怪物だった。
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オム、フー・ファイターズのデイヴ・グロール、レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズというロック界のカリスマ達が強固な集合体となったオールスター・バンドがついに苗場に姿を現した。ひとりひとりでも、超人でありカリスマであることはいうまでもないのだが、この3人が化学反応を起こしたライヴは、前述したとおりに怪物級の破壊力。脳裏に胸にその圧倒的にヘヴィな音塊を焼き付ける凄まじさは尋常ではなかった。
オープニングで3人の姿が確認できたときから興奮を隠しきれなかったが、雨を切り裂き、地鳴りを巻き起こすオープニング曲「No One Loves Me & Neither Do I」から魂を貫かれた。デイヴのドラム乱れ打ちに、ジョシュ・オムのギターが狂ったようにうねり、ジョンのベースが経験と厚みを加味して、分厚いサウンド・ウォールを形成する。70年代のロックのヴァイヴから、ブルースやハードロックのフィーリングを加味し、グランジ~ストーナーをも完ぺきに飲み込んだその音楽の前に震えを覚えてしまった。各々のジャンルで頂点を極めた者たちが集まっただけにそれは当然というべきかもしれない。嵐のような彼等の音楽は、CDで聴いたときと太さがまるで段違いだった。経験と技術に裏打ちされた3人の融合が、さらなるカオスを伴って粉骨砕身の音塊と化している。
当然ながら、彼等はCDを一枚しかリリースしていないため、そこからの出典がほとんどだったが、その中でも「Elephants」と「New Fung」が特に格別の2曲だったように個人的には思う。鼓膜をぶった切る衝動の連続だった。また、凄まじいジャム・セッションに発展していき大きな磁力となった曲もあったし、剛直なハードロックからサイケ・ブルージーな曲まで幅広く披露。老獪ながらもこの極太のグルーヴ、比類なき強靭なダイナミズム、次元がちょっと違う。また、その演奏している佇まいも画になり、感じられるワイルドな雰囲気がとてもかっこいい。もはや年齢など関係ないカッコよさがThem Crooked Vulturesには存在するのだろう。
それにしても本当に終始、圧倒されっぱなしのライヴだった。こんなライヴに出会えたのも久しぶり。ステージから発せられるとてつもないオーラも凄くて、この3人のカリスマ性は不変だということだろう。ジョン・ポール・ジョーンズが終盤でピアノを鮮やかに披露してくれたことも、目撃した皆様には強く印象に残っているはず。願わくば、短期のプロジェクトで終わることなく、またThem Crooked Vulturesとしての雄姿を見られることができれば幸いだ。
写真:古川喜隆
文:伊藤卓也