強かった日差しが弱まり、雨は降るんだか降らないんだか微妙な状況。グリーンステージでは、ドラマ『ツイン・ピークス』のテーマに乗ってThe Cribsが登場した。30代40代のロックファンに知られるのは、このバンドにザ・スミスのジョニー・マーがいることで、やっぱりスミスを聴いていた世代には感慨深いものがある。
まだ若く(といっても30歳近くなるのだが)やんちゃな感じがあるゲイリーとライアンの双子(だから『ツイン・ピークス』のテーマなんだろうか?)と、さらに若いドラマーのロスの3人の兄弟に、お兄さんというよりは完全の伯父さんという感じの年齢差があるジョニー・マーの4人組である。ライヴは”We Were Aborted”から始まり、パフォーマンスもテンポも暴れ気味のライアンを横目に、ジョニーが淡々とサポートしているという構図が面白い。もうちょっとジョニーらしい繊細なプレイを聴きたいとも思うのだけど、現在のクリブスにフィットできるようなプレイを心がけているということなんだろう。
日本語で積極的にMCをするのも彼らの特徴で、「ボクタチハくりぶすデス」とか「じょにートハハジメテのふじろっくデス」など前回の来日でもそうだったのだけど、ライアンの日本語はなかなかのものだ。ライアンは、ライヴ後半にステージから降りてフォトピットでも演奏していた。典型的な英ギターロックであり、覚えやすいギターのリフに歌のメロディがあるゆえにジョニーとの合体は必然と思えるのだ。ステージ前にはUKロック好きが集結、なかなかの盛り上がりをみせていた。
”Hey Scenesters!”、”Mirror Kissers”とか”Men’s Needs”なんて歓声がよく上がっていたし、”Be Safe”では、スクリーン映像にソニック・ユースのリー・ラナルドが登場し、彼の語りにバンドが演奏をつけるところなんかが聴かせどころだった。しかし、往年のスミス・ファンなら”Ignore The Ignorant”を聴けば「DJならこの曲と”Panic”を繋げられるよなあ」なんて思ってしまうことだろう。そんな思いとは関係なく現在進行形のバンドであるクリブスは堂々としていて、しっかり1時間弱のステージをやり切ったのであった。
写真:穂谷益代
文:イケダノブユキ