NARASIRATO PAN PIPERS

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7/30 12:11  Twitterに投稿する

NARASHIRATO

ご存じの通り、前夜祭のステージはレッド・マーキーただひとつ。アーティストがどんな音を奏でるのかを知らずとも、つい踊りたくなるようような破壊力が欲しいもの。しかも、雨は止まないときている。音楽を体いっぱい浴びたいという者はもちろん、雨宿りでレッドの屋根を借りる者もいるのだ。

UKの、ギャズ・メイオール周辺の遊び人ですらもステージ脇へと詰めかけたナラシラト・パン・パイパーズは、YouTubeの動画そのままに腰飾りで現れ、その立ち姿だけでオーディエンスを沸かせた。とんでもないライヴが繰り広げられるかも…そんな僕らの予感は、まんまと的中した。

簡単な太鼓の他には、葦(あし)で作られた楽器しかない。太さと、それに比例する長さによって打楽器に笛にとより分けられて、原始の音を奏でていた。笛はアンデスのケーナのように透んだ中にかすれた表情を持って、レッド・マーキーのフロアに吹き込み、目に映る肉体の躍動は猛々しく、まるで狩りをしているかの如く攻め入ってきた。

中盤、「日本の曲を歌うから、歌ってくれよ」、MCでそんなようなことを呼びかけたあとに始まったのは、坂本九の”Sukiyaki(上を向いて歩こう)”だった。アメリカのビルボード・チャートを駆け上がった名曲中の名曲で、シンガロングを演出。それだけでなく、コール&レスポンスを上手く使って、オーディエンスを煽動していた。

叩く、吹く、吼えるといった行動は、原始というキーワードを連想させていた。それは、長い年月をかけて、遺伝子レベルで組み込まれているもの。だからこそ、いとも容易くステージから最後尾に至る手拍子を演出したのだろう。

写真:横山正人
文:西野太生輝