フジロックのラインナップが決定し、タイムテーブルを眺めながら、音を聴いてみると、ふと気になる音に手が止まった。へー、スコットランドの人なのか、なるほど。え?元The Fratellisのフロントマンのジョンのサイドプロジェクト? ははぁん、なるほど。The Fratellisとしての活動に終止符を打ったのは今年、2010年の春のこと。バンドが解散することは悲しいことではあるけれど、そのバンドをいったん解体することにより、もう一度、それぞれの音楽のスイッチを元に戻して、再度自分のなかの音楽を構築し直すチャンスであると思うと、新たな楽しみができたとも思える。ジョンが音楽をリセットしたのは早く、次の音楽の基盤として誕生させたのがCodeine Velvet Clubだったというわけなのだ。
ジョンがCodeine Velvet Club として活動する仲間に選んだのは、Lou Hickeyだったのだ。ステージにはシャツにベスト 姿のジョン、隣にたたずむはスレンダーなラインが最大限美しく生えるようにデザインされた膝上丈ワンピースをきるLou。写真で見ていたLouとはまるで別人とも思えてしまう その姿は、女であるはずの私には決定的に欠けている要素、洗練された美というもの。 そしてまた、このLouの歌声は秀逸そのもの。女性でしか持ち得ない透明感と、艶かしさ と力強さの3つともを兼ね備えているのである。
それにしてもグラスゴーの音楽ネットワークには脱帽し放題である。The Fratellis というバンドの歴史を終えても、これだけ良質の音楽を排出することができる仲間ができるのだ。The Fratellisの延長線の音楽をするのではなく、Louというパートナーと、ベース、 ドラムにキーボード、トランペットとサックスを加えて7人のパワーは、グラスゴーの ポップさを追求した極上のポップ・ソング・オブ・ポップ、あるい はポップ・ソングのためのポップ・ソングに新たな1ページを追加した。
写真:熊沢泉
文:ヨシカワクニコ