最終日夕方、赤い衣装をまとったBuffalo Daughterがレッドマーキーに現れた。そういえば7月に出たばかりのアルバム『The Weapons Of Math Destruction』のジャケットも赤だ。赤・レッド・赤…彼らがこのステージに立つことは当然のような気分になってくる。
襟元にキラキラとした飾りのついたかわいらしいノースリーブワンピースの大野由美子が客席に向かって手を振る。対するシュガー吉永はオーバーサイズの赤いTシャツ、黒のスリムパンツ、スニーカーといったボーイッシュな格好だ。バンドでの彼女たちのキャラクターが衣装を見るとなんとなくわかって面白い。2人が向かい合うように並び、その後ろにこちらも赤いTシャツのムーグ山本とドラムの松下敦が並ぶ。
1曲目はニューアルバムから「Gravity」。名前どおり重力を感じるような重いリズムの上にミニマルなメロディが重なってオーディエンスを静かに揺らしていく。人力エレクトロサウンドから、続く「All Power To The Imagination」ではギターのカッティングがジャキジャキと響くロックン色の強いサウンドへ。Buffalo Daughterの3人の演奏もさることながら、ZAZEN BOYSなどで活躍するサポートドラムの松下敦がとても魅力的だ。クールな音を弾き出す3人に対して、松下は汗が飛び散るような獣のような熱さをみせる。ただ激しいドラムを叩きながらも決してバンドのサウンドを邪魔せず下から押し上げるような頼もしさがあるので、より3人の音が引き立つのだ。
「Pshychic A-Go-Go」が始まるとじりじりと熱を帯びてきた会場の盛り上がりは最高潮に。ミニマルなハンマーフックのギターリフに大野、シュガー、ムーグのハーモニーが心地良く響く。ラストはさらに煽るように「Cyclic」。演奏が終わると、そうだここは苗場だったとはたと気づいた。Buffalo Daughterは一瞬の赤い旅へ連れて行ってくれたのだった。
写真:熊沢泉
文:名塚麻貴